2009年12月、国内では10年ぶりに糖尿病の新薬が発売され、糖尿病の患者さんをはじめ医師たちの大きな注目を集めました。この新薬は、日本ではじめて承認された「インクレチン関連薬」で、これまでの糖尿病の常識を超えたとまで言われています。
インクレチンとは、食後の血糖値が上昇しそうな時に小腸から分泌され、血糖値を下げるインスリンの分泌を増やし、逆に血糖値を上昇させるグルカゴンの分泌を抑制して血糖値の上昇を抑える働きをするホルモンです。
このようなインクレチンの作用を高めるように開発されたものが、インクレチン関連薬です。従来の薬やインスリン注射は、副作用として生じる低血糖や体重増加が悩みの種でした。しかしインクレチンには、その人の血糖値に応じてインスリンの分泌量を調整どうきする作用があり、原則として低血糖による冷や汗や動惇などの不快な症状を生じさせずに、血糖値を下げることができます。
これは糖尿病治療薬としては画期的な特徴と言えます。すいさらに、膵β 細胞を保護し膵臓機能を回復する、体重減少が期待できるという効果に加え、心臓機能の向上、動脈硬化の抑制作用までもが報告されています。
インクレチン関連薬の登場によって、これからの血糖コントロールが飛躍的に容易になり、将来的にインスリン注射を使わなければならない患者を減らすことができるかもしれません。さらに、インクレチン関連薬を用いた治療には、長期的な糖尿病の経過を改善させる可能性のみならず、初期の糖尿病からその前段階の状態へ、そして最終的には正常の状態まで回復させる可能性までもが期待されています。
アメリカやヨーロッパでは、すでに6年以上前から使用され、現在は80カ国以上、のベ1000万人以上の方に処方され、そのすばらしい効果が確認されています。糖尿病の治療法は日々進化しています。近い将来、膵臓の機能を完全に回復させる新薬が登場するかもしれません。各製薬メーカー、研究機関の開発を待ちましょう。
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