健康診断などで、「LDL(悪玉) コレステロール値が高いので要再検査」と判定されたことはありませんか? コレステロールとは、細胞膜やホルモンの原料となるししっ脂質ですが、この値が高すぎると「脂質異常症」と診断されます。
そして、LDLコレステロール値が高いと将来的に動脈硬化を招き、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすリスクが高まると考えられてきました。ところが、2010年9月、日本脂質栄養学会が「LDLコレステロール値が高いと死亡率が下がる!」と発表したのです。
これは、おもに神奈川県内の住民約2万6000人を約8年間追跡した観察研究にもとづくもので、「男性はLDLコレステロール値が100未満の人は死亡率が高く、女性は120未満だとやや高い。
したがって、コレステロールは下げる必要がない。高いほうが安全だ」というものです。従来の定説と真っ向から対立するこの発表は、日本医師会や日本医学会、とくに日本動脈硬化学会の猛反発を招きました。
同学会は2007年にLDLコレステロール値が140以上などであれば、脂質異常症とする診断基準を発表しています。そして、大規模な臨床試験により、「脂質異常症の患者を、コレステロールを下げる薬を飲む人と飲まない人に分けたところ、薬を飲んだほうが心筋梗塞などの冠動脈の病気が起こる確率が3割も低い」としていたからです。このような医学界の混乱は、脂質異常症の患者さんたちにも動揺を与えています。なかには「コレステロールを下げる薬はもう必要ない」と独自に判断し、服用をやめてしまうケースも目立ちます。
しかし、日本脂質栄養学会の発表には科学的根拠が薄いと言わざるをえず、そのまま受け入れることはできません。このレベルの研究で、LDLコレステロール値が高いほうが長生きとするのは危険です。
脂質異常症の患者さんは主治医とよく相談し、服薬を判断してください。けっして医師に黙って薬をやめないようにしてください。最近、頚動脈エコーや脈波検査などにより血管の動脈硬化度(血管力) を診断することも可能になりました。この結果から、治療法を検討してもらうことも有用です。
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