次のような臨床データもあります。胎児が体内で死亡してしまったお母さんの羊水を調べたところ、羊水中の乳酸の濃度が異常に高くなっていました。その値は普通の正常分娩するお母さんの羊水中の濃度の3倍程度でした。
羊水中の乳酸濃度ほ、正常分娩群で9・51±2・91mM(ミリモル)1ミリモルは、100分の1モル相当 という値です。これが胎児が体内死亡したお母さんの場合には29・7mMというきわめて高い値を示したのです。
また前期破水・死産・重症妊娠中毒症などの異常群を平均すると12・78 ±246 mMとなり、通常よりも25% 高い値になることが分かりました。
さらに妊娠13 週羊水穿刺群でほ16・75 mM となり、これもかなり高い値でした。羊水中の乳酸濃度が高いという背景には、次のような原因を考えることができます。
乳酸とは、胎児が消費するエネルギーを作り出すための解糖(糖分を分解する) 作用の産物とされます。妊娠初期と異常分娩において乳酸濃度が高いということほ、胎児の呼吸が不十分であるために、その呼吸の不足を補うために解糖作用が昴進した結果であろうと考えられるのです。
いずれにしても、胎児に何らかの異常が生じる場合には、胎児を育む海である羊水にも異常があるということです。この羊水の異常が、胎児の異常によって引き起こされるのか、あるいは羊水の異常が胎児の異常の前提となるのか、どちらが先かは特定できないことかもしれません。
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