揚げものを食べた時や、少し食べ過ぎたという時、胃が重くなるような不快感に襲われる胃もたれ。その原因は従来、「胃の動きが悪く、食べものが胃に溜まるため起こる」と考えられてきました。
ところが最近、この「常識」が覆されました。もちろん、胃の動きが悪くて胃もたれを起こす方はいます。ただ、その反対に胃が働き過ぎても、胃もたれの原因になることがわかってきたのです。
じつは数年前、アメリカの医学雑誌に「新しいタイプの胃もたれがある」との新説が発表されました。それが、この胃が働き過ぎる胃もたれで、「胃のなかが空っぽでも、胃もたれが起こる」というのです。
これは、いったいどのようなことなのでしょう。新説は、次のように説明しています。胃に入った食べものは、胃粘膜から分泌される消化液で消化されますが、その消化液には強い酸性の塩酸が含まれています。そして、消化された食べものが小腸に送られる時は、塩酸も腸に送られます。しかし、腸にはアルカリ性の物質を分泌する細胞があり、胃液の塩酸を中和するので、ふつうは腸が傷つくことがありません。
ところが、胃液が多くなり過ぎたり、一度に大量の消化物が腸に届けられたりすると、中和がまにあわなくなってしまいます。すると、腸のセンサーが働き、これ以上消化物を送らないように胃に指令を出して動きを止めると同時に、脳にも痛みや不快感という形でシグナルを送ります。
これが、胃もたれ感につながるというのです。つまり、胃が働き過ぎて大量に消化物を腸に送り届けると、たとえ胃に食べものがなくても、胃もたれを感じるということです。
このタイプの胃もたれを持つ方は、胃の運動を高め、胃液の分泌を促進し消化を助ける「健胃薬」より、胃の働き過ぎで出すぎた胃酸を抑えるH2ブロッカーなどの「制酸剤」が有効です。
胃もたれには一般的な健胃薬を飲む方がほとんどでしょう。しかし、胸焼けを感じゃすい方などは、新タイプの胃もたれの可能性があるので、制酸剤を用いるほうが速やかに症状を緩和できるかもしれません。
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