氷は無秩序な結晶

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地球上にある水の1.65%は凍っている氷の状態です。その氷の90%は南極にあります。

しかし、昔から南極に水があったわけではないのです。約2億年前は南極は亜熱帯のような気候で、リストゾウィルスという生物やシダ植物があったのです。

南極に氷ができるようになったのは約7000万年前で、最も水が多かったのは約4000万年前だといわれています。

もちろん南極ばかりでなく北極にも氷はあり、北極圏にあるデンマーク領のグリーンランドは、島の83%が氷に覆われています。

グリーンランドの氷を1980年から輸入している会社があります。もともとは洋酒の輸入業を営んでいたのですが、グリーンランドの氷で水割りを作るとおいしく酒が飲めるのではないかと考えて、氷の輸入を思いついたのだそうです。氷河から2000〇年も前の水を切り出し、細かくパック詰めにして運んでいます。

見た目は気泡の多いまっ自な氷ですが、水やウイスキーに入れると、パチン、パチンとはじけるかすかな音が、いつまでも続く。この氷でブランデーやウイスキーを飲むと、ふつうの水より格段においしいそうで、理由はわかりませんが悪酔いしないというのです。

冷蔵庫で作る氷と2000年間凍っていたグリーンランドの氷河の水では、明らかに性状が違
うのでしょう。

さて、一般的な氷の構造をX線を利用して調べてみると、極めてきれいな格子に見えます。氷のなかの酸素が規則正しく並んでいます。しかし、X線では見ることのできない水素に着目すると、その構造はバラバラになっているのです。

水素の配列は氷のなかで、1秒間に1万回ほどの速さで動いているのです。水は酸素だけを見れば立派な結晶ですが、水素に着目すると、無秩序そのもので、非結晶ということになります。つまり、氷は結晶であるとも非結晶であるともいいきれない。「無秩序の結晶」とでも表現するのがふさわしいものなのです。

氷は簡単にとけて水になります。また氷点下の乾燥した場所では、水の状態を経ずに直接、気体の水蒸気になってしまうのです。

このような変幻自在ともいえる性質は、氷のなかの水分子同士を結びつけている水素結合の力が非常に弱いことに由来します。水分子のなかで酸素と水雷結びつけている、いわゆる共有結合も弱いが、水素結合はそれよりもはるかに弱く、結合力はその24分の1です。

結合力が弱いので、氷はいろいろな状態に簡単に変化できるということです。そのため、かき氷の氷とオンザロックの水、それぞれ趣きのある楽しみ方ができるのです。グリーンランドの氷もまた、それらとは違った側面があるのでしょう。

水素と酸素から成る最も単純な化合物である水について、その構造や特異性を調べれば調べるほど、水が不思議な物質であることがわかります。水が超能力をもっているのではないかと思うほどです。

液体(水)の方が固体(水)よりも密度が大きいこと、4度で最大密度になること、物をとかす能力が一番高いこと、表面張力が極めて大きいことなどです。こうしてみると、水は決して常識的な物質ではないことに気づかされます。あまりに身近すぎてその不思議な力に気づいていないということです。

一般に固体は明確な構造を持っていて、一方液体は、固体のようなはっきりした構造をもたない特徴があります。したがって、液体である水の構造を知ろうとすること自体に無理があるのですが、研究者たちは地道に研究を続けてきました。しかし、その構造の違いが、水溶液中の生化学反応などの速度に影響するかどうかに関しては、ほとんど注目されてきませんでした。

ところが、水について詳しく調べてみると、不思議な現象が次々と明らかになってきたのです。たとえば、雪どけ水の効果が、雪どけ後4~5日しか続かなかったり、また自然にとけたものではなく、煮沸してとかした場合には、その効果はなくなってしまうというようなことなどです。

そして、研究の結果すばらしいことに、この雪どけ水と同じょうな活性化した水が人工的に作れるようになったのです。

水に磁気処理を施したり、微弱電流を流すと活性化した水になります。さらにこの水には、水道管がさびるのを防ぐ作用があることが明かになってきました。

水の構造の変化などを知るために、研究者の間ではX繰回折法、導電率や粘性率などの測定による熱力学的方法、赤外線吸収スペクトル法、核磁気共鳴法など、また最近はやりのコンピューターシミュレーション法などさまざまな方法が使われています。

しかし、これらの方法を駆使しても、刻々と変化する水の構造を正確にとらえることには成功しておらず、まして、水の不思議な活性について完全な説明はできていないのです。

水の構造と酒の酒の熟成

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水の分子は不規則な四面体ですが、液体の水はそれがいくつもつながっており、分子間にはたくさんの隙間があるのです。

液体の水の構造をX腺解析などで調べてみると、1個の水分子のまわりに約4.4個の接水分子が存在します。固体の水の場合は4個ですから、10%大きいことになります。

一定体積の水のうち、実際に水分子そのものが占める割合は約38%です。つまり、残りの約62%が隙間というわけです。水はかなり隙間の多い構造ということです。

たとえば、水10mlに水5mlを加えれば当然15mlです。ところが、水10mlにエタノール5mlを加えたものは、25°で、14.6mlにしかなりません。

エタノールが水の構造の隙間に入ったためか、あるいは加えたエタノールによって、水の構造が変化したためです。

「スコッチは何年ものがよい」などといったりしますが、ウィスキー、ブランデー、焼酎、泡盛などの蒸留酒は、蒸留後何年か貯蔵した古酒が珍重されます。醸造酒にも、清酒や中国の紹興酒には古酒があります。こうした酒の熟成に、水が大きな役割を果していることが最近明らかになってきました。

酒を寝かせると、味に丸みが出てくるのは、水の分子の隙間に細長いアルコールの分子が入りこんで、アルコール分子が水に包み込まれた形になるためです。

新しい酒では、水分子とアルコール分子がバラバラに存在しているために、飲むと、ツンツンした刺激を受けてしますのです。酒の熟成とは、水分子とアルコール分子の会合の度合であるといえるのです。

現在、酒造会社ではNMR(核磁気共鳴) などの分析手段を用いて、どのくらいのアルコール濃度で貯蔵すれば、最も理想的なアルコールの熟成が達成できるかという実験を行なっているのです。

アルコールと水の混合溶液の実験結果では、60%のアルコール濃度の場合、アルコール分子が水分子間の隙間に入り込む率が最も高くなり、溶液全体の体積の3%近くが減るということです。

これまで経験的に行なわれてきたウィスキー貯蔵のアルコール濃度は、だいたい60%です。これが実験結果とびったり一致したのです。

アルコールを安定に保つ濃度は40%がいいとされます。40%というと、アルコールが最も粘り気をもつ濃度です。

現在、ウィスキーやブランデー、泡盛などの古酒を瓶詰めにする場合、アルコール濃度を40%前後に調整していますが、これはやはり安定性を保つためです。樽や素焼きのかめに詰めて貯蔵する場合には、最も熟成の進みやすい60%に、瓶詰めにして売り出す場合には、安定性のよい40%にしているのは、このような水分子とアルコール分子との関連をしっかり考えられているのです。

水の不思議な構造

はどのような構造になっているのでしょうか。化学記号で表わせばH2Oとなります。つまり水の構造は水素原子2つと酸素原子1つからなる分子です。

しかし、液体の水は単にH2Oという存在ではなく、互いに分子間力で結ばれ、エネルギーをやりとりする、ネットワークのような構造になっています。

液体の水はH2O分子単独の単なる集合体ではなく、水分子同士が水素結合したH2Onのような会合体からできていると考えればよいでしょう。しかし、このnの値がいくつなのかはまだわかっていないので、水の構造もまだ完全に解明されているわけではないのです。

つまり、20~30個の水の分子群が、瞬時に動いて再構成されていくということなのです。従来の水のイメージとはかなり異なりますが、これが水の姿ということができるでしょう。

水の構造がなぜ決まらないのか。その理由はわかっています。それは、水が10-12秒という極めて速い速度で絶えず変化しており、nの値が外的条件によって変化しているからです。水分子は酸素原子と水素原子とが104.5度の角度で結合しています。

酸素原子と水素原子の結合電子対は、酸素原子の電気陰性度が水素瞭子に比べて大きいため、いくぶん酸素憤子側へ偏っています。その結果、酸素原子はややマイナスに、逆に水素原子はその分少しプラスに、それぞれ帯電しています。

水分子中のマイナス電荷をもつ酸素原子と、プラス電荷をもつ隣りの水分子の水素原子との間にクーロン力が働き、水素結合を形成します。すなわち、液体の水は水分子が水素結合により集合したH2Onのような「かたまり」(クラスタ を形成していると考えればわかりやすいでしょう。

このnの値が外的条件によって変化することによって水の構造が変化し、その結果、水の性質が変わるのです。よく耳にする水の活性化、あるいは活性水なども、このことと密接に関係しているものです。

韓国の研究によれば、常温の水には、主として水分子が水素結合によって5つ集まった5員体および6つ集まった6員環が存在するといいます。

このうち、常温では5個集まった五員環構造が最も安定しており、温度が下がると6個集まった六員環構造の水の割合が増加します。そして、六員環構造の水は生理活性が高いのです。

雪どけ水は、鳥のヒナの発育を早めるなど特異な活性をもつのですが、これは水のこのような微細な構造の変化と関係しています。

水のおいしさについても、このような構造と密接な関連があるはずですが、科学的にはまだ解明されていません。

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水の驚くべきパワー

人体の60%以上は水であり、水なしでは生物や人間の生命は数日と保つことができません。しかし、そんな最も身近でありふれた液体である水が、物質としてきわめて奇妙な性質をもっているということは、ほとんど知られていません。

水のもつ奇妙な性質のなかで、最も不思議なものは氷が水に浮く、つまり固体が液体より軽いということではないでしょうか。

レストランで氷の入った水が出ることがあります。グラスの水に水が浮かんでいるという何の変哲もない光景ですが、これは考えようによっては奇妙な現象です。

水は固体であるから、物理の常識では、液体の水より密度が大きくて当然です。つまり、氷がグラスの底に沈んだとしても何の不思議もありません。

その氷も、これまた不思議な物質です。規則正しい結晶であるとも、無秩序な非結晶ともいえる構造をもち、身近に存在するあらゆる物質のなかで、最も容易に液体や気体に変化します。そして私たちは、簡単に氷といっていますが、これまでわかっているだけでも、実に11種類もの氷があるのです。それぞれ構造が異なり、圧力と温度の変化に対応してさまざまに変化するのです。

11種類の氷には、ローマ数字で氷Ⅰ 、氷Ⅱ 、氷Ⅲ 、という名前がついています。私たちがふだん見ている氷は氷Ⅰ で、氷Ⅰ以外はすべて二万気圧以上の高圧条件のもとでできる高圧氷です。

11種類の氷のなかで密度が1より小さく、水に浮くのはたった1つ、つまり氷Ⅰだけです。

水については、むしろ、わかっていないことのほうが多いといえるかもしれません。

たとえば、おいしい水の条件として、温度が低いということがあります。この場合、単に冷たいからおいしいと感じるのか、それとも温度が下がった結果、水の構造などに何らかの変化が起こっておいしく感じるのか、科学的に解明されてはいません。

雪どけ水が特殊な作用をもつていることもあります。しかし、この雪どけ水も、4~5日経過すると、その効果がなくなってしまいます。これがなぜなのか、実はまだわかっていません。

水には11種類ありますが、水にもたくさんの種類があるのえす。天然の水は、9種類の水の混合物です。私たちが使っている水はH216Oで、これを代表とみなして、H2Oと表記しているのです。

また忘れてならないのは、人間が使うことのできる水は、ごく限られたものであるということです。地球上にある水の97.5%は海水で、直接利用は限られています。残りの2.5%が淡水ですが、半分以上は極地や高山の氷として固定されています。使用可能である地下水、湖沼水、河川水は、地球上の水の0.3%程度に過ぎないのです。水は実は非常に貴重な資源なのです。