水は熱しにくく、冷めにくく、蒸発しにくい

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鉄は熱するとすぐに熱くなりますが、石はそれほど熱くなりません。この熱くなりやすさの程度は比熱で表わします。

比熱の単位には、1グラムの水の温度をたとえば14.5度から15.5度まで一度上げるのに必要な熱量を用います。

この熱量を1度当たり1カロリーという単位で表わします。鉄と鋼などの金属は0.1以下で、液体でもほとんどが0.5カロリー/1度くらいです。

水は非常に比熱の大きな液体ということになります。その代り、水はほかの物質に比べてたくさんの熱を蓄えることができます。

つまり、水は熱しにくくて冷たいという特徴があります。海の近くでは、日中は海から凪が吹いてくるのに、夜になると陸から海へ吹くという現象が起こります。これは、空気が冷たいほうから暖かい方向に流れるためです。日中は海より陸が執逆られて高温になります。逆に夜は陸が急に冷えて温度が下がり、海の水は冷めにくいので、陸から海へ凪が吹くことになります。

陸は海に比べて温度の上がり下がりが激しいのです。太陽は陸にも海にも一様に熱を注いでいるのですが、温度を1度上げるのに必要な熱量は海より陸の方が少なくて済みます。水の比熱を1とすると、陸は0.2ぐらいになります。

また水には、蒸発しにくいという性質もあります。前述したように、水の沸点はほかの液体に比べて異常に高いのです。これは水分子間の力(水素結全が強いためであるから、水を蒸発させるためには、この強い分子間力を断ち切るだけの熱を与えてやらなければなりません。

ということは、水が蒸発するときには、多くの熱を奪うことになります。

私たちのからだは体温を一定に保つためにいろいろなことをしているのですが、そのなかで最も重要なのは皮膚表面からの発汗作用です。

たとえば、汗腺が全部塞がれてしまうと、体温が異常に上がって、私たちは死んでしまいます。汗が蒸発するときに奪われる熱量は非常に大きいので、それによって体温を下げているのです。

かつて、イラクの砂漠地帯の遊牧民ベドウィンではヒツジの革で作った袋に飲料水を入れていました。とても冷たくて、おいしい温度を保っています。

また、パキスタンの砂漠地帯では、素焼の壷に入れた水を飲みました。素焼の壷に水を入れて蓋をして風通しのよい場所に置いておくと、壷から港み出た水が蒸発して熱を奪い、なかの水の温度が下がります。その結果、冷たい水が飲めるのです。

西アジアの乾燥地帯では素焼きの壷は大切な生活必需品であり、ヒツジの革袋に入れた水が冷えるのも同じ理由です。

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