人体の60%以上は水であり、水なしでは生物や人間の生命は数日と保つことができません。しかし、そんな最も身近でありふれた液体である水が、物質としてきわめて奇妙な性質をもっているということは、ほとんど知られていません。
水のもつ奇妙な性質のなかで、最も不思議なものは氷が水に浮く、つまり固体が液体より軽いということではないでしょうか。
レストランで氷の入った水が出ることがあります。グラスの水に水が浮かんでいるという何の変哲もない光景ですが、これは考えようによっては奇妙な現象です。
水は固体であるから、物理の常識では、液体の水より密度が大きくて当然です。つまり、氷がグラスの底に沈んだとしても何の不思議もありません。
その氷も、これまた不思議な物質です。規則正しい結晶であるとも、無秩序な非結晶ともいえる構造をもち、身近に存在するあらゆる物質のなかで、最も容易に液体や気体に変化します。そして私たちは、簡単に氷といっていますが、これまでわかっているだけでも、実に11種類もの氷があるのです。それぞれ構造が異なり、圧力と温度の変化に対応してさまざまに変化するのです。
11種類の氷には、ローマ数字で氷Ⅰ 、氷Ⅱ 、氷Ⅲ 、という名前がついています。私たちがふだん見ている氷は氷Ⅰ で、氷Ⅰ以外はすべて二万気圧以上の高圧条件のもとでできる高圧氷です。
11種類の氷のなかで密度が1より小さく、水に浮くのはたった1つ、つまり氷Ⅰだけです。
水については、むしろ、わかっていないことのほうが多いといえるかもしれません。
たとえば、おいしい水の条件として、温度が低いということがあります。この場合、単に冷たいからおいしいと感じるのか、それとも温度が下がった結果、水の構造などに何らかの変化が起こっておいしく感じるのか、科学的に解明されてはいません。
雪どけ水が特殊な作用をもつていることもあります。しかし、この雪どけ水も、4~5日経過すると、その効果がなくなってしまいます。これがなぜなのか、実はまだわかっていません。
水には11種類ありますが、水にもたくさんの種類があるのえす。天然の水は、9種類の水の混合物です。私たちが使っている水はH216Oで、これを代表とみなして、H2Oと表記しているのです。
また忘れてならないのは、人間が使うことのできる水は、ごく限られたものであるということです。地球上にある水の97.5%は海水で、直接利用は限られています。残りの2.5%が淡水ですが、半分以上は極地や高山の氷として固定されています。使用可能である地下水、湖沼水、河川水は、地球上の水の0.3%程度に過ぎないのです。水は実は非常に貴重な資源なのです。
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