寄生虫の増加について

  • 投稿日:
  • by

昭和30年代ごろの日本は、回虫や鉤虫、日本独特の風土病であった日本住血吸虫病などの寄生虫痛が蔓延している状態だった。40代以上の人なら、だれしも一度や二度虫下しをのまされたことがあると思う。

これらの寄生虫は、高度経済成長とともに姿を消したはずだった。しかし、現在の日本でも完全に寄生虫病がなくなったわけではない。それどころか動物から人間に感染する感染症はむしろ増え続けている。

アニサキス、旋毛虫、エキノコックスなどである。また、赤痢アメーバ、マラリアなども増加しているという。

では、なぜいまになってこのような寄生虫病が増加しているのだろうか。原因は2つある。海外から人を通じて日本に入ってくることと、輸入食品を通じて入ってくることだ。人間を通じてにも2つのルートがあり、1つは、日本人が海外旅行や、仕事での出張、現地での勤務により感染し、帰国の際に一緒に持ち込んでしまうのだ。

もう1つは、来日する外国人の増加である。故郷で感染して、そのまま日本にきて発症する例も多い。また、日本にくる輸入食品は膨大な数だ。もちろん、ひと通りの検疫はするが、量が多すぎて、完全に寄生虫の侵入を防ぐことは難しい。

海外旅行にいかないから安心というわけにはいかないのだ。確実に輸入寄生虫病は増えているのである。しかし、これらの輸入寄生虫病を防ぐことは可能である。

寄生虫の卵は七十度で死んでしまう。海外旅行の際にしても、輸入食品を食べるときにも、とにかく生食はせずに、必ず火をとおしてから食べること。

ワサビ、カラシ、酢、トウガラシなどはもちろん、塩、醤油に漬けた程度で寄生虫は死なない。冷蔵庫でもだめだ。果物を生食する場合は、肉や魚を切った包丁やまな板を使用していないかを確かめてから食べるようにしたい。

また、土地によっては、ノミ、シラミ、ナンキンムシなどが生息している。寝具や衣類にそれらの卵が付着して帰国することも考えられる。洗濯をして天日に干したり、こまめに掃除したり、手洗いをして清潔を保つようにすることが大切だ。それでも寄生虫に感染したと思ったら、医師に海外旅行をしたことや、感染源と思われる食物についてすみやかに報告しなければならない。

これは、寄生虫病のほとんどが多彩な症状を示し、普段寄生虫病の患者を見慣れていない医師だと、寄生虫病の存在も思いつかないことがある。また、医師の診断を受けるのは、できるだけ早いほうがよい。マラリアなどは病気の進行が速く、すぐに手を打たなければ死亡してしまう場合もある。とにかく、早く医師に相談することが重要である。

関連記事