胃腸 ピロリ菌 はストレスよりも重大です。会社の上司に無理難題を押しっけられるのは、サラリーマンにとって日常茶飯事です。「胃がキリキリ痛むよ」などと嘆く姿は、珍しくないでしょう。
これまで、胃炎や胃潰瘍はストレスが引き金になり、胃酸が過剰に分泌されて起こるものとされ、いまでも、一般的にはそう思われています。
それもそのはず、胃では強い胃酸がはたらくため、痛みの原因となるような細菌は住めないとされてきたので胃炎や胃潰瘍の原因として細菌はノミネートされていなかったんのです。
ピロリ菌
ところが、最近になって、胃を住みかとする菌がいることがわかった。「ヘリコバクター・ピロリ」という細菌がそれで、通称「ピロリ菌」とよばれています。米国ゲノム研究所で発見されました。
では、なぜピロリ菌は強い酸性の胃の中で生息できるのでしょうか。ピロリ菌には、胃液に含まれる尿素からアルカリ性のアンモニアをつくりだし、胃酸を中和させるはたらきがあるからです。そのアンモニアを防壁にして住みつくのです。
このときできるアンモニアが、胃の粘膜を傷つけてしまうのです。また、ピロリ菌自体が出す毒素や、ピロリ菌を排除しようとする免疫機能のはたらきが、胃にできた炎症を悪化させる。ピロリ菌が、胃炎や胃かいようを引き起こすのはこうしたメカニズムによるものです。
このピロリ菌は免疫にも強く、一度感染すると自然消滅することはないのです。つまり、その人は一生涯胃の中にピロリ菌を持ち続けることになります。いまのところ感染ルートははっきりしていないのですが、口を通して感染するルートが高い確率になっていそうということです。
ただ、唾液中には発見されないため、水や便を介在して感染するのではないかと考えられています。衛生環境のよくない海外で感染する可能性大です。
ちなみに、日本人は2人に1人がこのピロリ菌を持っているといわれます。とくに 40 歳以上の人に多く見られますが、これは戦前、戦中、戦後の日本の衛生環境の悪さと関係しています。
阪神・淡路大震災のときにも胃潰瘍になる人が多かったのですが、調べてみると、そのほとんどがピロリ菌に感染していました。
最近の日本人は、潔癖すぎるとか言われるが、やっぱり清潔な環境というものは人間にとって生きうる上で重要です。
ピロリ菌に感染するとまずだれでも間違いなく胃炎を起こします。これは、酒の飲み過ぎなどが原因で起こる急性の胃炎とは違い、痛みやむかつきが全くありません。いわゆる慢性胃炎といわれる症状で、感染後に軽い吐き気や腹痛があり、一週間もすれば何でもなくなってしまいます。
そのため、感染者の 9 割は、感染していても生活に支障をきたすことがなく、気づかないまま一生を終わってしまうことも多いのです。問題は、慢性胃炎よりすすんだ胃病になると、ほとんどの人がこのピロリ菌にかかっているということです。
実際、ストレス性の胃炎にかかったとしても、ピロリ菌に感染していないかぎり、胃潰瘍まですすむことは珍しいのです。また、通常、胃潰瘍は完治が難しいとされているが、ピロリ菌を取り除く治療をすると、再発することがほとんどなくなるのです。
ピロリ菌は胃病に深く関わっているといえるでしょう。日本人に多い胃がんも例外とはいえないので、軽い胃炎といってもピロリ菌が関与している場合ばかにすることはできません。
ピロリ菌の有無は、血液検査などで簡単にわかります。また、何種類かの指定された薬を服用すると、一週間程で除菌できるので、心配な人は医師に相談するのがいいでしょう。
感染経路がはっきりしていないから完全予防は無理だが、ピロリ菌が付着した手で食事をしないよう、食事前の手洗いを実行したい。また、歯垢の中にも発見されているので、歯磨きをしっかりして歯垢をためないことも大切です。
体質的にプレッシャーに弱く、仕事などでハードな日々が続くと胃腸の調子が悪くなる「急性胃炎」の場合は、漢方がいいでしょう。
コメント