マクガバンレポート(M委レポート)の教訓に騒然となった

アフリカにはなかった30余種の現代病

現代の多くの病気は、現代風つまり欧米風、文明国風の食事が狂った食事であるために 起きている「食源病」であるこれがM委のもっとも重要な指摘でした。そのことを詳しく述べる前にここでM委でのきわめて印象的な光景を1つ紹介しておこうと思います。

このエピソードは単に印象的でショッキングであるだけではありません。その意味が読みとれる人には実に多くのことを教えてくれる光景でした。 以下の表の病気を1つ1つていねいに拾って読んでいって欲しいと思います。

まず最初の便秘や盲腸炎からして「あ、自分もこれになった」という人が少なくないでしょう。大腸 ガン、乳ガンで親兄弟を亡くしたとか、いま家族の中に糖尿病や心臓病の者がいるなんて人もザらにいるに違いありません。

これらの病気は先進国ではごく普通になっている病気で、日本もそんな先進国の1つだからです。

ここでひとつ質問です。「あなたは少なくとも今までは、これらの病気は人間なら誰でもかかる病気だと思ってきたのではないでしょうか?」

多くの人がそう思っていたと答えそうです。ところが海を渡ってM委に出席して重要な証言をし、この表を資料として同委に提出したトロウエル博士(イギリス王立医学会議)はそんなことは言いませんでした。

「先進国ではごく普通の病気になっているが、私の在勤中のアフリカ諸国にはこれらの病気はほとんどありませんでした」 博士はイギリス政府から派遣されてウガンダなど当時のイギリス属領諸国政府の顧問医 師を30年にわたって務めました。そしてその体験をもとに『アフリカ医学辞典』も編集したのです。

先進国ではごく普通の病気になっているが1930~60年の間のアフリカにはなかった病気

消化器関係の病気
便秘、盲腸炎、大腸憩室症、痔、大腸炎、潰瘍性大腸炎、大腸ガン、大腸ポリープ、裂孔ヘルニア
代謝および心臓血管病など血管病
肥満、糖尿病、心臓病(虚血性=つまり先進国型心施病)、脚部動脈硬化症、アンギーナ、静脈瘤、静脈血栓症、肺動脈血栓症、胆石、痛風、腎晩結石、脳卒中、高血圧
内分泌関係病など
甲状腺中毒症、粘液乳腫、橋本病( リンパ腫性甲状腺腫)、アジソン氏病(副腎皮質分泌不全症)、低血糖症、リウマチ性関節炎,多発性硬化症、骨多孔症、変形性骨炎、悪性貧血、亜急性結合変性( 脊柱の変性病)、乳ガン

また食物繊維の重要性が説かれ、20年ほど前から日本の栄養学者たちも食物繊維、食物繊維というようになったのです。これも私自身がその頃、博士の学説をある雑誌に紹介した頃からそうなりました。

博士はいちはやく食物繊維の重要性を指摘して、世界の学界の食物繊維の研究をリードしたパイオニアです。そして博士に繊維の重要性を気づかせたのが30年間のアフリカ在勤の経験だったのです。

話は脱線してしまいましたが、博士は自分のつくった『アフリカ医学辞典』には表の病気を載せなかったそうです。そんな病気はアフリカにはなかったのだから当然です。

博士は上で紹介したような病気がアフリカになかった理由は、アフリカの黒人たちの食生活が先進国の食生活とは内容が違っていたからだとM委でその違いを詳しく証言しました。

そしてそれが人種的な体質の違いなどによるのではないことを豊富な実例によって説明しました。博士の証言で誰にも理解しやすい証言を1つ紹介すればこんな証言がありました。

「アフリカの黒人たちを徴用してイギリス軍に入ります。するとイギリス的な病気( つまり上にあるような病気) にちゃんとなる」

博士は先進国とアフリカの食事の違いについて説明する中で「先進国民は動物蛋白狂だ」などともきめつけたのです。この時のM委の会議場の雰囲気は同委の議事録から伝わってくるようです。議員たちも傍聴席も騒然となったそうです。ケネディ議員などは博士の証言の途中に割って入り、驚きをこめてつぎのようにいったことが議事録に記録されています。

「われわれは馬鹿だった。われわれは進んだ先進国民でいい食事をしていると思っていた。食事のことはアフリカの黒人に学ばなければならない」

一方は健康的な食事ゆえに病気知らずなのに他方は不健康な食事ゆえに病気を自分から増やしているとすれば、ケネディ議員でなくても叫びたくなるのは当然でしょう。

日本の病気先進国ぶりを嘆くトロウエル博士

食事内容のどんな違いがどんなふうに一方を病気先進国にし、他方を健康な国にしていたのか?これがもっとも重大な問題でありM 委が追究したのも当然そのことでした。日本にも関係のあるこの話の後日談をここで紹介してきましょう。

さっきの表が「1960までのアフリカにはなかった病気」となっている点に注意して欲しいのです。トロウエル博士のM委での証言にはこんな言葉もありました。

「私は1970年代になってかつての任地アフリカを再び訪ねました。すると大都市には大きな糖尿病の専門病院まで建っていて街には肥満体の黒人の姿も多かった 」

博士は同じアフリカでも西洋文明と接触する大都市から食事の西洋化が起こり、かつてはなかった病気が出てきたといったのです。上の病気が「1960年までのアフリカには... ...」となっているのはそういうわけです。

私は20年ほど前イギリスで博士と会いました。博士は私にこう言いました「私の在勤当時は70代、80代の元気な老人がごろごろいたアフリカも、いまでは西洋的な病気が増える一方。私の半生という短い期間にこんな悲しむべき変化が私の眼前で起きたのだ... 」

健康的な食事なら病気などは起きない

博士に関するエピソードを長々と紹介したのには理由があります。それは

  • 健康的な食事なら、人間は本来病気などになるものでないこと。
  • 裏返していえば、不健康な食事は病気を起こすもとであること。
  • かつては健康的だったアフリカに、いまでは西洋風な病気が頻発するようになったがそれと全く同じ現象が日本でも同じように起きていること。

そしてそれはアフリカの黒人を襲ったのと同じように、食事の欧米化の波が原因であったことです。これは何もいま例に挙げた子どもの糖尿病に限らないのはいう必要もないでしょう。

いまわが国で急増中の大腸ガンやその他のガン、さらに心臓病などもかつては日本には少なかったがために欧米的な病気とされていたものです。博士は、元気な老人がごろごろいた在勤当時のアフリカもその様相が〝私の半生という短い期間に一変したといっていました。

この現象もわが国でそっくりそのまま起きています。全く意味もない数字のマジックに惑わされて平均的寿命が延びたなんて馬鹿騒ぎをしているわが国は、寝たきり老人など要介護老人が世界一多い国です。そして、それと軌を一にして、元気な老人がごろごろいたかつての日本の長寿村など、いまでは過去の語り草に過ぎなくなっているのです。しかも、それは博士の半生と同じく20年くらいの短期間でそうなったのです。

同じような大きな変化(悪い変化)を経験したアフリ」カとわが国を比べるならば、さっきの表と博士の証言は書き切れないほど多くのことを教えているといえるでしょう。

書き忘れたことが2つあります。私が会った時博士は82歳でしたが、ヴィガラス、ヴィガラス(元気、元気)を連発し、自分で車を運転して迎えに来てくれました。歩く歩調も速く、私に同行した若い日本の新聞記者は一緒に歩けないくらいでした。

近頃の青年の弱々しさも食事の欧米化のせいか否かはともかく、博士の元気さはアフリカの教訓を自分でも活かしていたからに違いない。また、表では高血圧はアフリカの黒人にはなかったことになっています。しかし、博士は30年の在勤中、たった1人の高血圧の黒人患者に出会ったといいます。この患者は高裁判事でイギリス人的な食生活をしていたそうです。

なぜ先進国のl三大死困は一様にガン、心臓病、脳卒中か

20世溌初頭からのアメリカの食事の変化(アメリカばかりでなく欧米諸国でも同じ頃から同じような変化が起きている)、昭和30年代に比べた日本の食事の変化をごく概観的に紹介しました。

そして大ざっばにかつ二言でいえば、M委はアメリカ国民に20世紀初頭の食事にもどれと訴えたこと、さらにこれを日本向けに「翻訳」すれば、われわれは昭和30年代初め頃の食事にもどるほうがいいという意味になることなどを述べました。

ではなぜ現代先進国風の食事はいけないのかそのことをさっきの食事内容の変化にもう少し具体的にふれながら詳しく見てみましょう。トロウェル博士は M委で先進国民の「動物性蛋白狂」ぶりを攻撃しました。

しかし現代先進国の食事はそれだけでなく、いな、それ以上にさまざまな欠陥を持った欠陥食です。そしてそのような食事上の欠陥が、細かい点で多少の程度の違いはあっても全ての先進国に共通の欠陥となっているのが現代です。「地球は1つ」といわれる現代ですが、いまの点に関していうとまさに「先進国は1つ」になっているわけです。

もっと水を飲むと、もっと簡単に健康になれる

先進国で三大死因になっている心臓病、ガン、脳卒中のことだけ考えてもいまのことはすぐ納得できます。わが国を含め先進各国ではどこでもいまの三病が三大死因になっていることを知っています。

しかし多分多くの方はただ単にその事実を知っているだけで、その意味をあまり深くは考えないのではないか。これはあまりにその事実に慣れ過ぎてしまったためで、一歩突っ込むかあるいは逆に子どものように素直な感覚でこの事実を受け取れば、本当はびっくりしなければならない事実のはずです。

なぜならば違う気候風土の中で、違った肌の色や髪の色をしていて、違う生活をしているはずの先進各国の多種多様な民族が、一様に同じ病気で死んでいるというのだからです。

十人十色のように十民族十色のはずの各国民が、こと病気に関しては三大死病一色です。なぜそうなっているのか? 結論はきわめて単純明快です。十民族十国十色のはずなのにこと食事に関しては、そういう病気を起こすような間違った欧米風の食事一色にどこの先進国もなっているからです。

そしてそういう欧米風の食生活は、心臓病もガンも脳卒中も起こしやすい食生活なのである。M委の精力的で綿密な調査やその後に急速に進んだ多くの研究によっていまでは、トロウエル博士在勤中のアフリカ諸国のような食生活なら多くの病気がなぜ起きないのか、逆に、現代先進国風の食事だとM委が食源病だとした諸々の成人病やエイズのような病気がなぜ起きるのか、といったことがわかってきているのです。

しかしそれを詳しく見る前に、病気を起こさない食事と起こす食事の内容の違いをもう少し具体的に見ておかなければいけまえせん。以下表はごく大ざっばなものですが、それぞれの食事の内容の違いは一目瞭然です。

米先進国や現在のわが国の食東の特徴は、昭和30年代のわが国や病気のなかった頃のアフリカの食事に比べ、穀類などのでんぶん質でとるカロリーが少なく脂肪が多いことでです。また表には示してないのですが、同じ脂肪や蛋白質でも(A)や(D)では動物性が多く(B)や(C)の多くは植物性のものでした。

先進国
(A)
博士在勤当時の
アフリカ諸国(B)
日本
昭和30年代(C)
日本
平成10年(D)
でんぷん質
42~45%
70%
78%
58%
脂肪
40%をやや超える
10%
9%
26%
蛋白質
15%前後
20%
13%
16%
繊維
少ない
多い
比較的多い
少ない
砂糖
多い
ほとんどゼロ
少ない
多い
自然な食品
少ない
多い
多い
少ない
加工食品
多い
ゼロ
少ない
多い

明らかになった先進国の食生活の欠陥

M委で、多くの学者たちは先進国の食事の重大な欠陥の1つとして脂肪と砂糖の摂取が多く、繊維の少ないことを挙げていました。さっき、(A)や(D)ではでんぶん質が少ないのが特徴だといいました。しかし欧米先進国のでんぶん質の低い比率42~45% とか、平成10年の日本の食事の58% という数字も、実をいうと、とても鵜呑みできない数字だということを是非知っておく必要があります。

というのは、このでんぶん質の中には実は大量の砂糖が含まれているからです。砂糖もカロリーや栄養の分析のうえでは確かにでんぶん質です。

アメリカなどでは40% そこそこの全でんぶん質のうち、実は半分以上を砂糖でとっていて、自然な食品である穀類や野菜、果物からとるでんぶん質は砂糖でとるカロリーより少ないのです。日本だって過去数十年の間に砂糖消費が急増しているのは同様です。

このことは当然、自然な食品の中にあるビタミン、ミネラルや繊維の摂取量を激減させることになっりました。そしてそれが成人病をはじめとする多くの病気を起こす原因になっていることをM委は明らかにしたのです。

この他に先進国では、同じ食品でもたとえば米は玄米より白米に、小麦粉は白い小麦粉に、野菜や果物なども半加工品やジュース、匵詰めといったように食品の加工度を高めた形でとるのが普通になっています。

現代であれば、糖質を過剰に摂ってしまった後でも摂らなかったことにする健康食品がありますが、当然に、これは当時にはありませんでした。

そして同時に、加工の過程では食品添加物も大量に使われます。こういう先進国風の流儀も多くの問題を起こすことが明らかになったのです。あれやこれやの先進国風の要素が重なり合って、問題を起こしているのが先進国ということになります。

「多くの国の食生活を歴史的、地理的に比較していえることの1つは、でんぶん質の比率の高い国ほど比較的健康だということです。でんぶん質は最低ラインでもカロリーの65%はとるようにしないといけない」この指摘によれば表の(A)や(D)は不合格であす。

またM 委は同じでんぶん質でも自然な形の食品、穀類や野菜、果物でとるのでなければダメで、砂糖はうんと減らせと国民に訴えました。これによれば(A)や(D)のような食生活は二重の意味で不合格です。

M委のたった1つの指摘からでも現代先進国の食事がいかに欠陥食であるかがわかろうというものです。