「とてもきれいな死に顔でした... 」出棺前にご尊顔を拝した人が涙ながらにこういうのをよく聞きます。これは本当の話。
昨今の亡くなられた人の顔はどれもたしかにきれいなのです。これにはちょっとしたわけがあります。現在、実に日本人の死因の4分の1を占めるガンも、早期発見、早期手術をすれば治癒は可能です。しかし、もちろん、手術だけで治癒できるわけではありません。ガンをはじ.めとする重症患者の場合、体力が衰えているため、せっかく手術が成功しても予後が悪くて死亡してしまうケースが多いのです。
そこで、手術前後に満足な栄養が得られない患者に、高カロリーの栄養成分を注入し、患者の体力を回復させてから手術に臨むという高カロリー栄養療法が、近年目覚ましい発展を遂げています。この治療は、心臓に近い上大静脈内に細いプラスチックの注射管の先を置き、高カロリー輸液を注入するというものだから、口からものが食べられなくても十分な栄養が体内に送り込まれるというわけです。
まず患者を太らせ、栄養状態を改善してから、手術や放射線を当てたり、抗ガン剤を投与するのです。そうすれば、たとえガンが治療せずに、悪液質が全身に回ってしまったとしても、患者はやせこけたみにくい姿で死ぬのではなく、むしろふっくら太ってほおはバラ色ということさえあるのです。
せめて見かけだけでも「幸せな死に顔」にする。こんな配慮も医学の進歩のひとつといえるでしょう。
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