免疫力にも得意なところと不得意なところがある

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たとえば、結核菌にワクチンは効かない

これまで見てきたように、リンパ球のT 細胞、B紳胞が免疫の本隊ですが、時々軍事訓練をして戦闘能力を高めます。これがワクチンですね。

ワクチンとは、弱い病原体を体内に注入することで体内に抗体をつくり、感染症にかかりにくくすること。ワクチンを仮想敵国としてその方向に一斉に攻撃する訓練をするので、いざ本物のウィルスが侵入してきた場合、即座に潰せるわけです。こうしたウィルスのような小さいものに対しては、免疫はとても利口です。

以前、中国で新型感染症サーズが流行り、たくさんの死者を出して世界中が恐々としたことがあります。サーズウィルスが肺に入り、それを排除しようと集まったリンパ球で肺がいっぱいになり、呼吸不全を起こしたことが原因でした。このリンパ球をいったん肺の外に出して呼吸ができるようにして、せめて5 日間生きられれば、人の体には必ず抗体ができます。

抗体ができればウィルスは中和されるので、それほどうろたえる必要はなかったのです。2009 年には、メキシコで豚由来のインフルエンザウィルスにより多数の死者が出るという「新型インフルエンザ」が世界的に流行しました。日本でも恐ろしい情報が飛び交いましたが、新型インフルエンザによる死亡率は、諸外国の中でも非常に低かったのです。

免疫の仕組みを知らない厚生労働省の役人や政治家が大騒ぎをした感があります。その後、新型インフルエンザの扱いは、通常の季節性インフルエンザに切り替えられました。こうていえき日本では、2010年に宮崎県で牛と豚の口蹄疫が流行して社会問題になりましたが、これも同様。口蹄疫の病原体は、小児麻痔を引き起こすポリオウイルスに近いもくちくのですが、今やポリオという病気はワクチンでほとんど駆逐されつつあります。そのくらい免疫が有効なのです。

ですから、4 月に宮崎県で口蹄疫が発生したとき、すぐにワクチンを打っておけばよかったのに、グズグズしているうちに感染が拡大してしまったのです。口蹄疫のウィルスなど大したことはないので、抗体陽性の牛を食べても問題ありません。治った牛は生かしておいても問題ない。それを何十万頭も殺してしまったわけです。

このように免疫は小さいウィルスに対しては有効に働きますが、相手が大きくなるとバカになって役に立ちません。

たとえば、結核菌はウイルスの何億倍も大きいので、ワクチンは効きません。BCG の予防接種は結核のワクチンと考えられていますが、あんなものに効果はありません。ワクチンを打ったからといって、そばで結核の人がゴホゴホと咳をすれば、簡単に飛沫感染してしまいます。

こういった大きな細菌に対してはどうするかというと、我々は抗生物質という武器を持っているわけです。よくがん細胞に対するワクチンはできないのか、と聞かれますが、いろいろ研究は進められているものの、がんはウィルスとは違い、相手も大きく、そう簡単に効果のあるワクチンがつくれません。T細胞やB 細胞という軍隊は、がん細胞に対しては意外と頼りにならないのです。