難治性皮膚疾患「乾癬」は免疫異常が大きく関連している

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乾癬は皮膚の最も外側にある表皮細胞が浸潤する炎症細胞の刺激が原因

範囲に皮膚炎症が起こる病気の1つに、乾癬があります。乾癬になると、皮膚が赤く盛り上がり、表面に銀白色のかさぶたのようなもの(鱗屑(りんせつ)ができ、それがボロボロとはがれ落ちてきます。

乾癬は全身に現れますが、病変部位と正常皮膚は比較的、境界線が明瞭な場合が多いです。症状には個人差があり、強いかゆみが出る人もいれば、まったくかゆみが見られないという人もいます。

皮膚病変の見た目が気になって、人の目をさけるようになる患者さんが少なくありません。友人たちと一緒に温泉に入ることを躊躇したり、夏でも長袖で患部を隠したりするようになります。
生活の質(QOL)が低下していき、気持ちまでもがふさぐこむようになってしまいます。

では、乾癖はなぜ起こるのでしょうか。以前は、体の外側を覆う表皮細胞に問題があるという説と、皮膚に浸潤する炎症細胞による免疫の異常が原因であるという説に分かれていました。

乾癬になると表皮が異常なまでに盛り上がるため、皮膚に問題があると考えられたのです。また、免疫機能の異常が原因と考えられたのは、表皮の下にある真皮内に炎症細胞であるT リンパ球(白血球の一種)が数多く浸潤しているという理由からでした。

Tリンパ球は炎症細胞であるため、その言葉どおり炎症を引き起こし、発赤(皮膚が赤くなること) などの原因になります。T リンパ球は直接的にあるいはアルファ間接的にTN Fーαと呼ばれる炎症物質の産生に関係し、腫れや痛みなどを引き起こしてしまいます。

話は少し脱線しますが、十年ほど前、インフリキシマブという関節リウマチの薬が登場しました。関節リウマチはTN Fーαが大量に作られることで関節に炎症が起こり、痛みや腫れといった症状が起こります。インフリキシマブはTN Fーαの抗体なので、その働きを抑制します。

その結果、関節の炎症を抑えてくれるのです。インフリキシマブによる治療を始めた関節リウマチの患者さんの中に、乾癬も患っている方がいました。すると、治療を開始してしばらくたったころ、リウマチだけでなく、乾癬で起こっていた皮膚の炎症も劇的によくなったのです。

その発見以来、乾癬の原因は皮膚に浸潤するT リンパ球が深く関与しているという説が主流となりました。ただ、なぜ免疫機能が異常をきたし、Tリンパ球が暴走するのか、その詳細なメカニズムは明らかにされていません。

どのような人が乾癬になりやすいかというと、まず遺伝が考えられます。家族内発症があることから、何らかの遺伝的要因が想定されています。乾癬は遺伝的背景に加えて、何らかのきっかけがあって発症すると考えられています。

きっかけとなるのは、ストレスや疲労、喫煙、カゼ、アルコールや薬物の摂取などが挙げられます。

乾癬の治療は主にT リンパ球の異常を抑制する治療と、表皮の増殖を抑える治療に分けられます。Tリンパ球の異常を抑制する治療には、ステロイド外用薬や光線(紫外線)療法、免疫抑制剤などの種類があります。

薬の一部には妊婦さんに使用できないものもありますが、基本的には医師の指導や注意を守れば、副作用も少なく、症状の改善が期待できます。

乾癬の改善には適度な日光浴や十分な睡眠が肝心で入浴では体を優しく洗うことが大切

乾癬の改善には日常生活を見直すことも必要です。第一に取り組んでほしいのが禁煙です。喫煙は乾癬の発症リスクを高めるだけでなく、症状の悪化も招きます。

受動喫煙も体に害を与えますから、少なくとも乾癬患者さんの前での喫煙は控えてください。また、適度に紫外線を浴びることは乾癬の改善に有効です。ただ、過剰な日光浴は逆に症状を悪化させかねません。季節や地域によって紫外線の量は異なり個人差もあります。

入浴に関しては、熱いお揚に長時間漬かるのは禁物です。皮膚の天然保湿因子などが落ちて乾燥を招き、乾癖の悪化にもつながるからです。タオルで体をゴシゴシ洗うのもいけません。

できれば、石けんを泡立て、手で体を優しく洗うくらいがちょうどいいでしょう。睡眠時間は十分にとってください。睡眠不足は乾癖に限らず、あらゆる病気の引き金になります。かゆみで眠れない場合は、医師に相談すれば適切な治療薬を処方してくれます。乾癬の患者さんは1人で悩まず、しつかりと医師に相談して治療を受けることを心がけてください。

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