若いなら完全な糖質制限食はしないほうがいい

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若い人は腸のためにも適度な糖質が必要

最近、「炭水化物抜きダイエット」が流行を通り過ぎ、「痩せたければ炭水化物を抜けばよい」という安易な考えが定着してきています。

しかし、糖質制限食がなぜ体に良いのか、きちんと理解されているでしょうか。そもそも若い人は体を壊しかねないため、完全な糖質制限食をしないはうがよいのです。その理由をお話しする前に、私たちの体がどのようにエネルギーを産生しているのかをご説明しましょう。

みなさんは、人間の体が2つのエネルギー生成系を持っていることをご存じでしょうか。これらは「解塘エンジン」と「ミトコンドリアエンジン」と呼んでいます。私たちの体は、2種類のハイブリッドエンジンを搭載して動いているのです。

なぜ、私たち人間はハイブリッドエンジンを持つにいたったのか、答えは進化の過程の中にあります。私たち生物が最初に誕生したのは、酸素のない地球でした。そのときの生物が使ったエネルギーは、酸素を必要としない、糖を原料とした「解糖」という化学反応によるものでした。解糖エンジンでエネルギーをつくりだしていたのです。

そのうち地球上に酸素が増加し、酸素を利用しないとさらなる進化ができなくなりました。そこで私たちの祖先の細胞が、酸素を好む好気的な細菌「アルファ・プロテオ細菌」を自分の中に取り込んで「ミトコンドリア」にしました。先ほど述べたように、私たちの体は60兆個もの細胞でつくられていて、その中には、遺伝情報を持つ「核」や、特定の機能を持つ「細胞内器官」が存在しています。その細胞内器官の中で、私たちの健康を支配する最も重要な器官が、ミトコンドリアなのです。ミトコンドリアは、私たちの細胞内にあり、酸素を吸ってエネルギーを生成することを最大の役割としています。

この酸素を好むアルファ・プロテオ細菌を取り込んで、ミトコンドリアとして機能させるようになった細胞は、酸素を使って効率良く莫大なエネルギーを生みだせるようになり、大きく進化し、動物細胞ができあがっていきました。

若い人が炭水化物抜きダイエットに手を出さないほうがよい理由は、前出の2つのエネルギー産生法のうち、若いい体は解塘エンジンをメインに動かしているからです。

解糖エンジンの特徴は、急なエネルギー需要が生じたときに、血中のブドウ糖を利用して瞬時にエネルギーをつくりだせることです。このエンジンでは瞬発力が得られます。ただ、エネルギー効率は良くなく、原料となるブドウ糖を多く必要とします。ですから、解糖エンジンがメインで動いている若い人が、炭水化物抜きダイエットをしてしまうと、体を働かせるのに必要なエネルギーを十分に産生できず、体を壊すことになります。

解糖エンジンを動かすのはブドウ糖であり、ブドウ糖の原料となる糖質は、主食となるご飯やうどん、そば、パスタ、パンなど炭水化物に多く含まれます。イモ類や果物にも豊富です。砂糖もブドウ糖の原料です。ですから、甘いお菓子やジュースなどにも非常にたくさんの糖質を含むことになります。

若いうちは、炭水化物を含む糖質を適度に摂ることが大事です。ただし、糖質を多く含む食品は、カロリー数も多く、食べ過ぎれば太ります。解糖エンジンがメインで動いているうちは、糖質は太らない程度に適量を摂るようにしましょう。適量とは、たとえば1日3食きちんと主食を摂ったら、間食で糖質を摂らないようにする感じです。

ちなみに、みなさんは「脳の唯一のエネルギーはブドウ糖」と聞いたことがあるでしょう。この通説を信じている人は、「糖質制限食をすると、頭がバカになる」と言います。しかし、脳の場合、ふだんメインエンジンとしているのは、効率良く莫大なエネルギーを生み出せるミトコンドリアエンジンです。

脳が糖を必要とするのは、とっさの判断やストレス時の反応など瞬発的に活動するときです。こうしたときには解糖エンジンが働きます。現代社会のようにストレスフルな状況にあると、脳は絶えず糖を要求します。しかし、脳の要求にまかせて甘いものを食べ過ぎるのは要注意です。体が太るからです。ストレス時のドカ食いは、白色脂肪細胞に脂肪を蓄えやすくなります。

しかも、糖質を摂り過ぎると、腸では困ったことが起こってきます。腸では、糖質を消化吸収していますが、それは自分の栄養源とするためではありません。小腸の栄養源は、昆布やチーズ、緑茶、シイタケ、トマト、魚介類などに含まれるグルタミン酸で、大腸の栄養源は、水溶性食物繊維を使って腸内細菌がつくりだす短鎖脂肪酸という栄養素なので、糖は自分の栄養にはなりません。糖質を摂り過ぎると、腸は、自分の栄養源は入ってこないのに、自分の栄養源ではない糖質の消化吸収のために働かなければならず、負担ばかりが大きくなり、ダメージを負ってしまうのです。

若い体には、糖質は必要ですが、食べ過ぎはマイナスです。1日3食、体が満足できるだけの主食を摂ったら、間食で糖質を摂らないようにする調整が大事です。

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