中高年になったら主食は食べないほうがいい

人体に搭載されたハイブリッドエンジンは、加齢とともに、解糖エンジンからミトコンドリアエンジンへと比重が移っていきます。個体差はありますが、40 代からだんだんと移り変わり、50歳を過ぎるとはとんどの人の体は、ミトコンドリアエンジンをメインに働かせるようになります。

中高年以降の体に求められるのは、持久力です。解糖エンジンの瞬発力は、あまり必要ではなくなります。解糖エンジンはエネルギー効率が良くなく、持久力としては使えないため、年を取ってくると、エネルギー効率が良く持久力に優れたミトコンドリアエンジンへとメインのエネルギー産生方法が移行するのです。

ミトコンドリアは、私たちが日々食べる食物から得る栄養素と酸素を原料として、効率良くエネルギーを産生しています。細胞内のミトコンドリアの数は、その細胞がどれだけエネルギー代謝を行うかによって違ってきます。

たとえば、脳や腸、筋肉、肝臓、腎臓などエネルギーの要求が大きい臓器の細胞には、数百から数千ものミトコンドリアが含まれます。一方、赤血球や皮膚の細胞には、ミトコンドリアがほとんど見られません。赤血球や皮膚は、解糖エンジンで動いているからです。

このように、年齢や細胞の働きによって、メインのエネルギー産生方法は変わります。また、ミトコンドリアエンジンでは、発動時に解糖エンジンの助けが必要となります。瞬発力のある解糖エンジンがまず動き、それを引き金としてミトコンドリアエンジンが動きだし、酸素を使って膨大で持続可能なエネルギーを産生します。

ですから、ミトコンドリア系にメインエンジンが移ったのちも、糖質がまったく必要なくなるわけではありません。しかし、多過ぎても困ります。ミトコンドリアエンジンがメインになったのちも解糖エンジンをフル稼働させていると、ミトコンドリアエンジンがうまく働けなくなってしまいます。誤作動を起こし、大量に取り込んだ酸素を活性酸素に変えてしまうのです。

ミトコンドリアエンジンでは、1日に500 リットル以上の酸素を呼吸によって取り入れ、食事から摂った栄養素を燃やし、エネルギーをつくりだしています。この過程で、約2 パーセントの酸素が活性酸素に変わります。ところが、メインエンジンがミトコンドリア系に移ったのちも糖質を摂り過ぎて解糖エンジンをフルに働かせていると、それ以上の活性酸素が発生するようになります。

中年期に入ったら糖質は徐々に減らしていき、高齢期に入ったらできるだけ摂らないひけつようにするのが、健康の秘訣です。メインエンジンが切り替わったのちは、主食やお菓子を摂らないはうが、体は快適に働きます。

ただし、我慢はストレスになるので禁物です。私ももとはご飯党でしたから、お楽しみ程度に昼食には五穀米を食べます。1日1回、五穀米を食べれば、ミトコンドリアエンジンに変わった体は十分に満足します。どうしても主食を摂りたいときには、白く精製されていないものを選んでください。玄米や全社粉のパン、十割そばなどならば、食物繊維が多いため消化吸収に時間がかかり、解糖エンジンのフル稼働を抑えられます。

一方、完全な糖質制限食を進める場合、炭水化物を含むイモ類などの根菜や豆類、果物なども制限されます。しかし、食べ過ぎなければ、私はこれらを適度に食べたほうがさよいと思っています。

それらの植物性食品は、腸内細菌の前になるだけでなく、活性酸素の幸を減らす抗酸化力を持っているからです。腸内細菌を元気にすることも、活性酸素の害を消すのも、健康な長寿人生には欠かせません。それを支える根菜類・果物を心配なく食べられるようにするためにも、主食は抜いておいたほうがよいのです。

日本人の4大疾病は「ガン・心筋梗塞・脳卒中・糖尿病」です。そのすべての発生に活性酸素が関与しでいます。活性酸素は、腸内細菌の働きを弱め、免疫力を落とさせます。中高年になると、何かしらの病気を抱える人が増えるのは、ミトコンドリアエンジンに切り替わったのちも若い頃と同じように主食やお菓子を食べ、解糖エンジンをフル稼働させているから、と私は考えています。

若い人は腸のためにも適度な糖質が必要

最近、「炭水化物抜きダイエット」が流行を通り過ぎ、「痩せたければ炭水化物を抜けばよい」という安易な考えが定着してきています。

しかし、糖質制限食がなぜ体に良いのか、きちんと理解されているでしょうか。そもそも若い人は体を壊しかねないため、完全な糖質制限食をしないはうがよいのです。その理由をお話しする前に、私たちの体がどのようにエネルギーを産生しているのかをご説明しましょう。

みなさんは、人間の体が2つのエネルギー生成系を持っていることをご存じでしょうか。これらは「解塘エンジン」と「ミトコンドリアエンジン」と呼んでいます。私たちの体は、2種類のハイブリッドエンジンを搭載して動いているのです。

なぜ、私たち人間はハイブリッドエンジンを持つにいたったのか、答えは進化の過程の中にあります。私たち生物が最初に誕生したのは、酸素のない地球でした。そのときの生物が使ったエネルギーは、酸素を必要としない、糖を原料とした「解糖」という化学反応によるものでした。解糖エンジンでエネルギーをつくりだしていたのです。

そのうち地球上に酸素が増加し、酸素を利用しないとさらなる進化ができなくなりました。そこで私たちの祖先の細胞が、酸素を好む好気的な細菌「アルファ・プロテオ細菌」を自分の中に取り込んで「ミトコンドリア」にしました。先ほど述べたように、私たちの体は60兆個もの細胞でつくられていて、その中には、遺伝情報を持つ「核」や、特定の機能を持つ「細胞内器官」が存在しています。その細胞内器官の中で、私たちの健康を支配する最も重要な器官が、ミトコンドリアなのです。ミトコンドリアは、私たちの細胞内にあり、酸素を吸ってエネルギーを生成することを最大の役割としています。

この酸素を好むアルファ・プロテオ細菌を取り込んで、ミトコンドリアとして機能させるようになった細胞は、酸素を使って効率良く莫大なエネルギーを生みだせるようになり、大きく進化し、動物細胞ができあがっていきました。

若い人が炭水化物抜きダイエットに手を出さないほうがよい理由は、前出の2つのエネルギー産生法のうち、若いい体は解塘エンジンをメインに動かしているからです。

解糖エンジンの特徴は、急なエネルギー需要が生じたときに、血中のブドウ糖を利用して瞬時にエネルギーをつくりだせることです。このエンジンでは瞬発力が得られます。ただ、エネルギー効率は良くなく、原料となるブドウ糖を多く必要とします。ですから、解糖エンジンがメインで動いている若い人が、炭水化物抜きダイエットをしてしまうと、体を働かせるのに必要なエネルギーを十分に産生できず、体を壊すことになります。

解糖エンジンを動かすのはブドウ糖であり、ブドウ糖の原料となる糖質は、主食となるご飯やうどん、そば、パスタ、パンなど炭水化物に多く含まれます。イモ類や果物にも豊富です。砂糖もブドウ糖の原料です。ですから、甘いお菓子やジュースなどにも非常にたくさんの糖質を含むことになります。

若いうちは、炭水化物を含む糖質を適度に摂ることが大事です。ただし、糖質を多く含む食品は、カロリー数も多く、食べ過ぎれば太ります。解糖エンジンがメインで動いているうちは、糖質は太らない程度に適量を摂るようにしましょう。適量とは、たとえば1日3食きちんと主食を摂ったら、間食で糖質を摂らないようにする感じです。

ちなみに、みなさんは「脳の唯一のエネルギーはブドウ糖」と聞いたことがあるでしょう。この通説を信じている人は、「糖質制限食をすると、頭がバカになる」と言います。しかし、脳の場合、ふだんメインエンジンとしているのは、効率良く莫大なエネルギーを生み出せるミトコンドリアエンジンです。

脳が糖を必要とするのは、とっさの判断やストレス時の反応など瞬発的に活動するときです。こうしたときには解糖エンジンが働きます。現代社会のようにストレスフルな状況にあると、脳は絶えず糖を要求します。しかし、脳の要求にまかせて甘いものを食べ過ぎるのは要注意です。体が太るからです。ストレス時のドカ食いは、白色脂肪細胞に脂肪を蓄えやすくなります。

しかも、糖質を摂り過ぎると、腸では困ったことが起こってきます。腸では、糖質を消化吸収していますが、それは自分の栄養源とするためではありません。小腸の栄養源は、昆布やチーズ、緑茶、シイタケ、トマト、魚介類などに含まれるグルタミン酸で、大腸の栄養源は、水溶性食物繊維を使って腸内細菌がつくりだす短鎖脂肪酸という栄養素なので、糖は自分の栄養にはなりません。糖質を摂り過ぎると、腸は、自分の栄養源は入ってこないのに、自分の栄養源ではない糖質の消化吸収のために働かなければならず、負担ばかりが大きくなり、ダメージを負ってしまうのです。

若い体には、糖質は必要ですが、食べ過ぎはマイナスです。1日3食、体が満足できるだけの主食を摂ったら、間食で糖質を摂らないようにする調整が大事です。

糖質オフ効果はこちら。

便利生活は体を老化させる

1口30回噛んで活性酸素除去することで腸も脳も若返る

ストレスのほかにもう1つ、腸内細菌やNK細胞を阻害する見過ごせない物質があります。それが、活性酸素です。活性酸素の毒性は非常に強いものです。活性酸素に細胞が攻撃されると、細胞膜の脂質が酸化します。

酸化とは、サピることです。細胞膜がサビると、栄養と老廃物の出し入れをスムーズにできなくなり、細胞は老朽化します。また、活性酸素は細胞の核に納められた遺伝子を傷つけ、遺伝子が傷ついた細胞はガン細胞に変異したり、死滅したりします。しかも、腸内細菌やNK細胞は活性酸素に影響を受けやすくできていて、活性酸素を浴びると腸内細菌は数を減らし、NK細胞は活性を弱めるので、免疫力が落ちて命にかかわる病気を起こしやすくなるのです。

近年では、老化と活性酸素の関係についても、さかんに研究が行われています。アンチエイジングの専門家たちは、「老化とは酸化することと同じ」と言います。「白髪が増えた」「物忘れが多くなった」「肌のシミヤシワが増えた」「視力が弱くなった」などの老化現象は、細胞がサビついてきている証です。

ですから、病気を避け、老化のスピードを遅らせるには、活性酸素の発生土を抑え込むことが重大な鍵となるのです。そのための一番の方法は、よく嗜んで食べることです。

唾液には、活性酸素の害を抑え、消去する抗酸化作用のある酵素が含まれています。具体的には、カタラーゼ(CAT)やスーパーオキシダーゼ(SOD )、ペルオキシダーゼ(POD)などの酵素が、消化酵素とともに含まれていて、発ガン物質の毒出し作用があるものもあります。

これらの酵素は、唾液の中にたくさん含まれます。唾液は、噛めば嗜むはど分泌暮が増えるので、体の抗酸化力を高めるには、唾液をたくさん出しながら食べることが重要です。噛むことで活性酸素を消去するには約30秒間かかりますから、1回l秒、ゆっくりと計30回噛むことが必要です。この食べ方が病気を防ぎ、老化を遅らせるのです。しかも、よく噛んで食べると記憶力が高まることがわかっています。1口30回噛んでいると、脳の前頭前野と海馬が刺激され、活性化されるのです。

前頭前野は、思考計画の立案や学習行為などをつかさどる、脳の中で最も知的で論理的な働きをする部分で、海馬は「記憶の司令塔」と呼ばれます。論理的な思考力も記憶力も、中高年になるにつれだんだんと衰えていく分野ですが、よく噛んで食べるだけで活性化されるのですから、実践する価値は高いでしょう。私も毎食、1口30回を実践しています。

私たちがよく噛んで食事をするべき理由は、もっと現実的なところにもあります。困ったことに、私たち現代人の周りは、活性酸素を出すものであふれているのです。私たちの体を構成する細胞や免疫システムは、ジャングルや草原を裸同然の姿で走り回つていた1万年前からまったく変わっていないことがわかっています。

ところが、文明が発達したことにより、生活環境だけが様変わりしました。私たちの細胞には外からの影響で活性酸素が発生しますが、細胞内でも活性酸素が生じます。活性酸素は自分たちの細胞をサビさせたり、障害を起こしたりしますが、その強い攻撃力で体内に侵入したウィルスや細菌を退治するという役目もあるのです。

つまり、活性酸素も免疫機能の一部なのです。現代の生活環境は、快適で便利で清潔で暮らしやすいものですが、体は1万年前になかったものに触れると、それを敵だと勘違いし、活性酸素を発生してしまうのです。

たとえば、駅の改札を通ってICカードを機械に触れさせるたび、私たちは大量の電磁波を浴びています。電子レンジやIHクッキングヒーター、携帯電話、パソコン、テレビ、ドライヤーなど、電気を使うものはすべて電磁波を発します。

とくに、体と近距離で使うものほど、活性酸素を発生しやすいと考えられます。また、大気汚染やシックハウスなど化学物質を含む空気、食品添加物や水道水、抗菌グッズなど、化学物質の含むものも活性酸素を発生させます。現代人の生活と活性酸素の発生は、切っても切れない関係にあるのです。病気を防ぐには、活性酸素の発生量を抑えることが大事です。それには、1 口30回よく噛んで唾液をいっぱい出して食事をする食べ方が、どうしても必要なのです。

ダイエットの面からもよく噛んで食べることはとても大切です。同じ量を食べても食べ方の工夫で痩せられる

健康のための禁煙は本末転倒

1日10本以下のタバコより恐ろしいのは禁煙ストレス

喫煙者の肩身は狭くなる一方です。どこもかしこも禁煙化が進み、タバコを吸えるのは狭く閉ざされた部屋の中など、場所も限定されています。

喫煙者も多くの人は、ガンや心筋梗塞、脳梗塞、呼吸器疾患などさまざまな病気を引き起こす原因になると耳にするたびに、「タバコ、そろそろやめたほうがいいのだろうな」と思っていることでしょう。タバコを吸うと、体内の活性酸素圭も増え、腸内細菌にも良くありません。免疫力の低下も引き起こします。これはまぎれもない事実です。

ですから、「禁煙したほうがよいでしょうか」と聞かれると、私も「そのほうがいいですよ」と答えていたのです。しかし、その考えをすっかり改める出来事がありました。

数年前、私はある銀行の定年退職をお祝いする会に招かれ、講演を行いました。講演後の懇親会に参加させていただいた際、あるグループの方々に声をかけられました。「先生、私たちは定年退職を機に、今日から禁煙を始めようとみんなで決めました。まだまだ長生きしたいですからね」

当時の私は、「タバコは百害あって一利なし」という常識を信じていましたから、「ああ、それはいいですね。タバコはガンになるから、やめたほうがいいですよ」と答えました。翌年、また同じ会に招かれました。すると、なんと禁煙グループの10人のうち5 人がガンになっていたのです。それを聞いて、私は大事なことを見落としていたことに気づきました。

なぜ、禁煙グループの半数がガンを発症してしまったのでしょうか。もちろん、それまでの喫煙がガン細胞をつくっていたことが第一に考えられます。しかし、定年退職をして急激に環境が変わったことに禁煙が加わって、ストレスが増大したことも大きかったはずです。

退職と禁煙という2大ストレスが、腸内細菌のバランスを乱し、NK細胞の活性を弱め、ガン細胞の急激な増殖を許してしまったのだと思いいたったのです。

肺ガンと1日の喫煙本数を調べた統計があります。1日50本も吸っていると、肺ガンになる確率は1本も吸わないときの15.3倍にもなりますが、1日10本までならば2.2倍です。この数字をどう読み取るかはご本人しだいですが、「肺ガンになる」と断言できるほどの数字ではないと考えます。

タバコの煙は人体にも腸内細菌にも決して良いものではありませんが、それ以上に怖いのはストレスです。禁煙がどの程度その人のストレスになるのかを考えず、一様に禁煙をすすめるのは医者の怠慢でした。

ただし、10本以上は良くありません。また、節煙をすると1本を貴重に感じ、肺の奥まで深く吸い込むような吸い方になるので、かえって体に良くないという意見もあります。

喫煙はストレス解消が目的なのですから、体への負担を最小限にできるよう、浅く吸う、ひと吸いでも満足したらすぐ火を消すなど、吸い方を工夫しましょう。

人様に迷惑をかけてもいけません。タバコは、喫煙者本人よりも周囲に与える悪影響のほうが大きいことを忘れてはいけません。

https://kusiri-guide.com/archives/57

ビールは1日2本、お酒は2合までなら健康に悪影響はない

みなさんが病気にならずに長生きしたいと考えたとき、真っ先に思うのは、お酒はやめたほうがよいのかどうか、ということでしょう。結論をお話しする前に、ストレスと腸内細菌の関係からお話ししましょう。

人体には免疫システムが備わつています。免疫には、自己と非自己を区別する能力がぁり、病原菌や異物などの非自己を排除して病気から体を守っています。免疫が体内で正常に働いているからこそ、私たちの体はガンなどの重大な病気のほか、感染症を防ぎ、アトピーや気管支喘息などのアレルギー疾患を予防できています。また、生きる力や心の問題、アンチエイジング( 抗加齢)にも関係していることが明らかになっています。

つまり、免疫とはその人の生きる力そのものです。その免疫の70 パーセントを腸内細菌がつくつています。腸には人体で最大の免疫組織があって、腸内細菌がその免疫組織を活性化しているのです。腸内細菌がいなければ、免疫組織は働くことができません。では、腸内細菌は腸の中でどのように存在しているのでしょうか。

日本人の腸管は、広げればテニスコート1面分もの面積を持ちます。そこには多種多様な腸内細菌が集合体をつくって生息しています。その眺めが、まるでお花畑のように美しいのです。そこから、腸内細菌の集合体は、腸内フローラと命名されました。

腸内フローラは成人で500種類以上もあります。細菌の種類でいえば100兆個、重さに換算すると1〜2キログラムにもなります。この壮大な腸内細菌を便宜上分類するために、働き方のタイプから「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」と区別しています。

腸内フローラの美しさは、実は、腸内細菌の縄張り意識の強さがつくりだすものです。腸内細菌は、体に悪さをする菌が侵入してくると、侵入者を排除するために攻撃を繰り返します。食べものも病原菌も体内に吸収されるのは腸からであり、腸内フローラがしっかり働いていれば、人は病気にならずにすむのです。

腸内フローラが健全に働くために第一に重要なのは、「善玉菌いっぱい、日和見菌はどはど、悪玉菌少々」というバランスです。ところが、心理的あるいは身体的ストレスが、善玉菌を減らし、悪玉菌を増やしてしまうのです。

善玉菌のチカラはこちら

九州大学の須藤信行教授らのグループが、ストレスと腸内細菌の関係について系統的な研究を行っています。生体が有害なストレスを受けたとき、脳内や交感神経からは「カテコラミン」という神経伝達物質が分泌されます。カテコラミンは消化管の局所に直接的な影響を与え、腸内細菌に影響を与えることが明らかにされました。

カテコラミンが体内で放出されると、動悸、血圧の上昇、発汗、血圧上昇、覚せい、血圧凝固系の克進など、体内でさまざまな変化がもたらされます。カテコラミンの放出は、人体がストレスにさらされていることを知らせる生体反応です。

須藤教授の研究では、腸がカテコラミンにさらされると、大腸菌などの悪玉菌は増殖が進み、腸管局所でも病原性が高まっていました。ストレス過剰な生活を続けていると免疫力が落ち、心身ともに病気になりやすくなるのは、悪玉菌の病原性が高まり、腸内細菌のバランスが乱れてしまうことに原因があったのです。

また、免疫細胞のNK細胞も精神的ストレスの影響を非常に受けやすい性質があります。NK 細胞の働きがストレスの影響によって弱まると、ガンになりやすくなります。

大好きな人と楽しく、ほどほどに飲む

結論から言えば、禁酒が大きなストレスになるのならば、お酒はやめないほうがよいのです。

私たちは、両親からアルコールの分解酵素を受け取っています。両親からともにそれぞれ分解酵素を受け取った人は、お酒の飲める人で、飲むことが心から楽しい人です。よく「休肝日を週に1日はつくりましょう」と言いますが、お酒の飲める人に休肝日は必要ありません。お酒を休むことが、かえってその人のストレスになって悪玉菌を増やしてしまうからです。

お酒の飲める人の遺伝子が、飲酒によってどう障害されるのかを示した実験結果によると、ビール大ビンの半本を飲むと、遺伝子の障害の度合いが、飲んでいないときの半分まで下がります。2本までならば、飲んでいないときと同じです。つまり、お酒が好きな人にとっては、ビール半本、日本酒半合までならばかえって体に良く、ビール2本、日本酒2合までならば、体に影響を与えないことがわかったのです。ただし度を越してはいけません。飲み過ぎは腸内バランスを乱し、命を縮めます。気の合う人と楽しく飲むことも大事で、嫌いな人と飲むとストレスで免疫が下がり、体のためになりません。

一方、両親のうち、片親からしか飲める酵素を受け継がなかった、ビール1杯飲んだだけで顔が真っ赤になるような人は、自分が飲みたいときにだけ楽しい気持ちで飲むよぅにしましょう。

お酒も訓練すれば、量を飲めるようになりますが、このタイプの人が「つき合いも大事だから」と無理に飲んでいると、10倍以上の確率で食道ガンになるという統計もあります。両親から酵素をまったく受け継がなかったいわゆる下戸の人は、お酒がストレスになりますから、飲まなくてよいのです。酒宴の場にいるだけで楽しいという人は、参加してもお酒は笑顔で断り、会話だけ楽しむとよいでしょう。最近は、ノンアルコール飲料も増えていますのでこちらにしておきましょう。

空腹、プチ断食は若返りどころか命を縮める

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1日3回、同じ時間に食事をするリズムがガンを予防する

元気に長生きするためには、脳の欲求に惑わされることなく、腸が欲するものを「おいしい」と味わいながら、楽しく食べる「食べ方」が重要です。「食べたい⊥ と訴える脳の声に従って食べ過ぎ飲み過ぎを繰り返せば、腸をダメにしますし、命を縮めます。しかし、「空腹」や「プチ断食」にシフトするのも、やはり行き過ぎです。

「空腹」や「プチ断食」が健康に良いと提唱する人は、根拠として長寿遺伝子の存在を挙げることが多いようです。長寿遺伝子とは、「サーチイン遺伝子」「長生き遺伝子」「抗老化遺伝子」などとも呼ばれ、すべての人のDNAに組み込まれており、活性化させることによって寿命が延びると考えられています。長寿遺伝子は、ふだんは細胞の中たたで眠っています。その状態では寿命は延ばせないので、長寿遺伝子を叩き起こす必要があります。これが近年よく開く「長寿遺伝子をオンにする」ということです。

長寿遺伝子をオンする方法として必要なのは、「カロリー制限」と「運動」といわれます。この説をもとに、食事の回数を減らし、摂取エネルギーの制限をすれば痩せられ、長寿遺伝子をオンできて若返りに役立つと、その人たちは言うようです。

しかし、最近の研究では、こんなマウス実験が行われています。マウスを2つのグループに分け、一方は20 パーセントのエネルギー制限をきっちり行い、もう一方は好き勝手に食べさせます。結果は、エネルギー制限をしたマウス群は若々しく、好き勝手に食べていたマウス群は、老いが目立ちました。この結果により、20 パーセントのエネルギー制限がマウスの長寿遺伝子をオンにしたことが推測されます。

ところが、実験には続きがあります。エネルギー制限をしたマウス群のうち、一方はそのままエネルギー制限を行い、もう一方は自由に食事をさせるようにしました。すると、後者のグループは老いが進み、再びエネルギーを制限しても、若返りは図れませんでした。長寿遺伝子を1度オンしたあと、オフにしてしまうと、再びオンできなくなってしまうというのです。

っまり、長寿遺伝子をオンするために食事制限を一度始めたら、生涯続けなければ効果はなくなります。ですが、人間の場合、無理や我慢をするとそれがストレスとなり、脳が逃避行動に走ります。厳しい食事制限をしている人ほど、ドカ食いを突然してしまいやすいものです。ストレスを紛らわせたい脳が、一瞬の快楽を求めて食欲を高めるからです。

私は、1日3食規則正しく食事をし、1日の食事の中で食べる量を調節するのが、無理も我慢もともなわない最も優れた長寿遺伝子のオンの仕方だと思っています。私も、1日1食や断食など、修行僧のような我慢はしません。1日3食の食事を大事にいただきながら、長寿遺伝子をオンしています。

私が「空腹」や「プチ断食」をおすすめしない理由は、長寿遺伝子の問題だけではありません。人間の体は、日内リズムに従って活動しています。

たとえば、人間の体内では、日に3000~5000 個ものガン細胞が生まれていますが、増殖し病態としてのガンにならないための免疫システムとして、ガン細胞を攻撃する免疫細胞が働いています。免疫細胞にはキラーT細胞やマクロファージなどがあって、ナチュラルキラー細胞(NK細胞) がその中で最も重要な働きをしています。

NK細胞は、朝の9時前後と夕方の5時頃に活性が最も高くなり、夜の9時頃になると低くなります。就寝時はさらに低くなります。このリズムを崩すような不規則な生活をしていると、NK細胞活性が低下し、ガンにかかりやすくなるのです。

日内リズムを整えるには、食事が非常に役立ちます。1日3回、毎日同じ時間に食事をしていると、体内のリズムもそれに合わせて整ってきます。食事の時間は自分の生活に合わせて決めれば大丈夫ですが、その時間はできる限りずらさないことが大事です。

食事を1日1 回にしたり、断食したりすると、体がリズムを整えるチャンスがそのぶん失われ、日内リズムが乱れやすくなります。朝は太陽の光を浴び、夜は光にさらされないことでも日内リズムは整いますが、現代生活ではそれも難しいでしょう。N 細胞のリズムを狂わせない規則正しい生活が、ガン予防の最も簡単な方法なのです。

昔の日本人の強さを取り戻すならやっぱり「発酵力」

あまり苦しい、ツライ運動は腸内細菌にはダメージ

「好きなものを我慢しなくても絶対痩せる!」という広告を見かけますが??ですね。

通常、1 キログラムの脂肪を消費するには、7000 キロカロリーを燃焼させる必要があるとされます。5 キログラム脂肪を減らすには35000 キロカロリーの燃焼となり、2 週間で消費するには1 日当たり2500 キロカロリーずつ燃焼させていくことになります。

ジョギングの場合、1時間で消費できるエネルギーは、一般に500 キロカロリー前後ですから、5時間走り続けて、ようやく2500 キロカロリーを燃焼できます。2週間で5 キログラムの体重を落とすには、単純に計算して、毎日ジョギング5時間に匹敵する行動が必要になるわけです。

もちろん、人の体は数字通りにはいきません。その前提を覆すつもりはありませんが、よほど強靭な精神の持ち主でなければ、運動だけで2 週間で5 キログラムも痩せるのは不可能でしょう。

また、運動のやり過ぎは、体にかえって悪い影響を与えることもあります。呼吸を荒げて行う激しい運動は、体内の活性酸素の発生量を増やすからです。中高年は翌日に疲れを残すほどのハードな運動はしないほうが、腸内細菌のためです。

ただし、ほどほどの運動は大事です。運動には、筋肉を維持したり増やしたりする作用があります。人体が1 日で消費する稔エネルギーの約3分の1 は、筋肉で使われているので、筋肉が多くなれば、脂肪の燃焼率も高まり、痩せやすい体になります。

ほどほどの運動とは、心身が爽快感を覚え、翌日、「体の調子がいいな」と感じる程度です。私は、大学の講義に行く日には、最寄り駅から約20分間、周りの景色を楽しみながら歩くようにしています。その程度のほどほどの運動で十分です。

歩くのが好きな人はウォーキングをすればよいし、ゴルフが好きな人は週末にコースを回るのでもよいでしょう。ストレスは腸内細菌にダメージを与えますから、「おもしろくない」「つらい」と思うものは無理してやらず、好きな運動をするのが、腸から健康になるコツです。運動は体重を落とすためにするのではなく、痩せやすい体づくりと元気な腸を育てるために行うと考えましょう。

食品の力を借りて、体内の燃焼率を高める方法もあります。その食品とは、唐辛子です。唐辛子の辛み成分「カブサイシン」には、体内の燃焼効率を高める作用がぁることで有名です。「唐辛子を食べると痩せる」とは言いません。運動と同じく、体内の燃焼効率を高め、痩せやすい体づくりに役立つと考えるのが適当です。

最近、辛みのない唐辛子の中には「カブシエイト」という成分が含まれており、カブサイシンと同じように代謝を高め、脂肪燃焼を促進する作用があると発表されています。

これは味の素株式会社の研究成果です。その研究発表によれば、カブシュイトを継続的に摂取することで、1日あたり約60キロカロリーも燃焼率が上がり、お腹回りの脂肪が減少していく効果が認められました。ただ、このカブシエイトが含まれているのは、「辛みのないトウガラシ」という特別な新種に限られるようです。

私たちが食生活に手軽に取り入れられるのは、カブサイシンのほうでしょう。以前、カプサイシンの痩身効果が注目され、一味唐辛子を持ち歩き、食事に大量に振りかけている人たちがメディアで大きく取り上げられたこともありました。

しかし、単一の食品で健康になろうとしたり、ダイエットを成功させようとしたりするのは、日本人の悪いクセです。何ごとも過ぎたるは及ばざるがごとし。下痢をしたり、排便の際に肛門に熟さを感じたり、辛過ぎて食べるのが苦痛になるほど摂取しては、逆に健康に良くありません。

毎食の味噌汁やサラダ、青菜のお浸しに一振りする程度に、唐辛子を活用するのがおすすめです。ビリッとして味も引き締まり、おいしさが増します。「おいしい」と感じる程度に使うことが、ポイントです。

国立健康・栄養研究所のサイトにも、カプサイシンには熱放散・熱生産の作用があるほか、胃粘膜保護作用や関節痛の凄和、血液受容器の異常による高血圧の緩和作用など多様な作用が知られ、沈痛・抗炎症作用も注目されていると記されています。

カプサイシンダイエットはこちら

腸内細菌を増やす食事こそダイエットの王道

私は、脳ほどダイエットの敵で手強いものはないと思っています。脳で食事を考えているうちは、痩せることはできません。

ほとんどの人が、人間の脳は地球最高の叡智であり、全能だと考えているかもしれません。しかし、私に言わせれば、脳にはモラルがないし、だまされやすいし、意志薄弱です。「人間は地球上で最も進化した生命体」と思っていること自体、うぬぼれ屋の脳がさせる思い違いです。

先日、ある患者さんに「便通はいかがですか」と尋ねたら、「今日はベンツではなく、ポルシェで来ました」と得意げに答えました。この患者さんの脳は、かなりのうぬぼ屋です。これは特別なことではありません。すべての脳がうぬぼれ屋だからです。

脳は私たちをだましますし、私たちも脳をだまします。不摂生な生活を送っている人ほど「自分は病気にはならない」「太っていても大丈夫」と思い込んでいます。なんの根拠もなく脳に思い込ませ、快楽におぼれていたい脳は思い込みに従っているのです。

ところが、腸は脳のようにだましたり、だまされたり、勘違いなどはしません。うぬぼれたり、感情的になったりもしません。ただ黙々と自分に課せられた仕事を行います。

ですから、ダイエットを成功させたいのならば、腸に従ったほうがかしこい選択です。そう断言する根拠として、腸と脳の成り立ちを紐解いてみましょう。

地球上に最初の生命が生まれたのは、今から約40億年も前のことです。生物が最初に持った臓器は腸でした。脳ができたのは、約5億年前と推定されています。

生物は、歴史上8~9割もの期間を、脳を持たずに生きていたのです。約40億年という悠久の時に比べ、約5億年とは地球が1固まばたきをする程度の時間でしょう。

その悠久の時は、地上の生物が、腸を中心に進化を遂げてきた歴史とも言い換えられます。私たち人類も、その一部です。

腸は人類が人間に進化する以前の古い歴史を知っているので「人間の体はこうなっている」と熟知していますが、大脳皮質は人類の進化とともに発達してきた臓器なので、人間の体を熟知できていません。人間もまた、歴史の浅い脳をうまく使いこなせていないのです。だからこそ、私たちは脳に簡単にだまされ、脳をだましてしまえるのでしょう。

そんな脳に対し、腸は私たち人間に誠実です。心身が健康であり続けられるよう、頑固なまでに自分の仕事を行います。「大便は体からの大きな便り」というのはその通りで、腸は便の量や色によって心身の健康状態を私たちに知らせています。

便秘や下痢などは、腸の中で良くないことが起こつているという腸からの警告ですから、とくに腸の声に耳をすませて、腸内細菌が働きやすいようにしてあげることです。

ところが、脳がこれを邪魔するのです。精神的な疲労などが重なると、疲労感を一時でも忘れるために、暴飲暴食に走らせます。「ストレスと免疫の関係」も私の研究テーマの1つですが、ストレスにさらされると、たとえ便通の状態が良くないと知っていても、暴飲暴食という快楽に脳は飛びついてしまうのです。

ダイエットでリバウンドしやすいのは、「食事制限」という我慢がストレスとなり、一瞬でも気を許すと「甘いものを食べた〜い」「お腹いっぱい食べた〜い」と脳が強烈な指令を出すからです。

食べ過ぎ飲み過ぎや肥満が健康に良くないことは誰もが知っていて、それでも痩せられないのは、脳で考えてダイエットをしているからです。

ダイエットを成功させるには、まず腸の声に耳をすませることです。目の前のスイーツを脳が「食べたい」と指令を出してきたら、腸に尋ねてみるのです。「腸は、本当にこのスイーツを食べたいかい? 」と。腸はきっと「NO」と言うでしょう。脳の欲求に惑わされず、食べ過ぎ飲み過ぎを防ぐには、このひと呼吸が非常に重要なのです。

脳が暴飲暴食を要求してきたら、必ず腸に問いかけてください。あなたの問いかけに対し、腸は腸内細菌を増やす食事を欲しがるはずです。

腸内細菌が増えれば腸内がきれいになり、消化力が高まって、排泄力も増します。腸内細菌の好物で食事を整えれば、人は絶対に太りません。

太っている人は痩せていきます。腸は無駄な食べものを決して欲しがりませんから、腸に従えばダイエットは成功します。そして、体も心も健康になります。そうした食べものについては、第2章にてお話ししましょう。

腸が下す判断は脳よりも的確で正しい

にこにこ食べればメタボも解消できる

今以上に元気な心身で、毎日をもっとエネルギッシュに過ごしたいと思うなら、腸内細菌を元気にしてあげることは欠かせません。免疫力の7割は腸が、3割は心がつくります。最近の研究により、腸の働きを良くするのも、心の幸福感を増やすのも、腸内細菌であることがわかってきています。

ところが、その大事な腸内細菌を痛めつけてしまうものや事柄がいくつかあります。その1つが、肥満です。体が脂肪で覆われると、体内に活性酸素が絶えず充満したようになります。

活性酸素とは、体の細胞を傷つけ、さまざまな病気を引き起こす怖い物質で、非常に毒性が強く、これを浴びると腸内細菌が弱り、数を減らしてしまうのです。

肥満が体にNGであることは、周知のとおりですが、「なぜいけないのか」といえば、腸内細菌に与えるダメージが大きく、結果としてそれが健康を損なう原因になってくるからなのです。

そこで必要になるのが、ダイエットです。腸内環境を良くし、病気になりにくい心身をつくるためには、肥満解消が欠かせません。ダイエットとは本来「食事療法」の意味ですが、日本では「痩せること」に意味がすり替わり、「ダイエット」を名乗る運動療法が数多くあるという、おかしなことにもなっています。

しかし、食事療法に限ってダイエット法を見ても、いずれも基本が抜け落ちています。ダイエットに最も大事なことは、「食べ方」です。

ダイエット法の多くは、カロリー制限が基本です。カロリーとは、熱量の単位で、その食べものを摂ると体内でどの程度のエネルギーになるのかを数値化したものです。最近は、1食を500キロカロリーに抑えた献立レシピ集なども数多く出版されています。こうしたレシピ集も、ダイエットの根本をエネルギー制限に置いています。

しかし、よく考えてみてください。カロリーとはただの数値です。人には、「個体差があります。同じものを食べても、消費されるエネルギーは人によってまったく違い、エネルギーの消費効率の良い体を持つ人がいれば、効率の悪い体を持つ人もいます。消費効率の悪い体を持つ人は、おのずと太りやすくなります。

効率の悪い体を持つ人は、おのずと太りやすくなります。いろいろなダイエットを試したものの思うように痩せられず、リバウンドを繰り返しゃすいのも、ダイエットの負の側面です。ダイエットを成功させられない人は、エネルギーの消費効率の悪い、痩せにくい体をしていることをまずは自覚してください。

「おいしい! 」という感覚がエネルギーを消費させる

では、消費効率の悪い痩せにくい体質とは、どのようなものでしょうか。人の体は、約60兆個の細胞で成り立っています。それらの細胞の中には、細胞質内にしぼうてき脂肪滴を持った細胞が存在し、その数は数百億個といわれています。これが脂肪細胞とた呼ばれるもので、脂肪を溜め込むだけでなく脂肪の合成や分解なども行っています。

脂肪細胞には2種類があります。そのうちの1つ「白色脂肪細胞」は、脂肪を蓄積して、肥満の原因になる細胞です。脂肪を蓄えると数倍にも膨らみ、それでも蓄え切れないほどの脂肪が入ってくると、細胞分裂して数を増やしていきます。もう1つの「褐色脂肪細胞」は、脂肪を燃焼させる細胞で、運動などをしなくても脂肪を燃やし、体重を落とす作用を持っています。

消費効率の悪い痩せにくい体質とは、白色脂肪細胞が活発で、褐色脂肪細胞の働きが悪くなっている体のことです。そこで今、褐色脂肪細胞を増やして、肥満の治療をしようとする研究が進んでいます。褐色脂肪細胞には、脂肪をエネルギー源として効率的に消費し、熱を発散させ、肥満を改善させる働きがあるからです。

さて、食事の際に、本来その食品が持つ熱量以上に体温が上昇することが、しばしば観察されます。これを研究すると、「おいしい」「いい香り」などエネルギーになると思われていない感覚刺激が、実はエネルギーを消費させていることがわかったのです。

「おいしい」「いい香り」と味覚・喚覚などの感覚が刺激されると、交感神経が刺激されます。交感神経は、体内環境を整える自律神経の1つで、自律神経には活動の神経である交感神経と、休息の神経である副交感神経があり、両者は括抗して動いています。交感神経が刺激されると、ノルアドレナリンなどのホルモンが分泌されます。

ノルアドレナリンは、交感神経の神経伝達物質で、このホルモンが分泌されると交感神経は活動的になり、エネルギーの消費量が増すと同時に、褐色脂肪細胞の脂肪燃焼を誘導します。

こうなると、食事をしながらも脂肪の燃焼率がぐんぐん高まります。ダイエットに最も大事なのは「食べ方」と断言する理由はまさにここです。「『おいしい』と感じながら食べること」「大好きな人と食べること」「にこにこ食べること」の3つが、その献立が持つエネルギー以1 の熟を消費させ、痩せやすい体をつくるのです。

反対に、「『まずい』と思いながら食べること」「嫌いな人と食べること」「ストレスを感じながら食べること」は、褐色脂肪細胞の活性を落とし、エネルギーの消費量を最低限にし、白色脂肪細胞に脂肪を琴喜せることになります。

「仕事をしながら食べる」「つき合いで飲みに行く」「ランチ会議をする」「子どもに注意しながら食べる」「ストレス解消のために食べる」という食べ方は、いずれも太る食べ方です。こうした食べ方を続けていると、いくら摂取カロリーに気を使っていても、太りやすい体になっていきます。

イライラや不安、不満などを感じながら食べることは、腸内細菌にとっても良くありません。腸内細菌はストレスに悪い影響を受けやすいという性質があります。ストレスを受けると、大腸菌やバクテロイデス菌、クロストリジウム菌など悪玉菌と呼ばれる菌が増えてしまい、腸内での病原性が高まります。こうなると、体を傷つける有害物質が発せられ、病気になりやすい体になっていきます。

また、悪玉菌が増えると、腸年齢がどんどん年を取ります。腸年齢は、寿命の長さに逆相関します。膿年齢が高い人は早死にしやすく、勝年齢が若い人は長生きすることがわかっています。

「つき合いだからしかたがない」とお酒を飲みに行くお父さん、食事中に子どもや夫に小言を並べるお母さんに太っている人が多いのは、こうした理由があったのです。