脳の思い通りに動いているとダイエットは失敗する

腸内細菌を増やす食事こそダイエットの王道

私は、脳ほどダイエットの敵で手強いものはないと思っています。脳で食事を考えているうちは、痩せることはできません。

ほとんどの人が、人間の脳は地球最高の叡智であり、全能だと考えているかもしれません。しかし、私に言わせれば、脳にはモラルがないし、だまされやすいし、意志薄弱です。「人間は地球上で最も進化した生命体」と思っていること自体、うぬぼれ屋の脳がさせる思い違いです。

先日、ある患者さんに「便通はいかがですか」と尋ねたら、「今日はベンツではなく、ポルシェで来ました」と得意げに答えました。この患者さんの脳は、かなりのうぬぼ屋です。これは特別なことではありません。すべての脳がうぬぼれ屋だからです。

脳は私たちをだましますし、私たちも脳をだまします。不摂生な生活を送っている人ほど「自分は病気にはならない」「太っていても大丈夫」と思い込んでいます。なんの根拠もなく脳に思い込ませ、快楽におぼれていたい脳は思い込みに従っているのです。

ところが、腸は脳のようにだましたり、だまされたり、勘違いなどはしません。うぬぼれたり、感情的になったりもしません。ただ黙々と自分に課せられた仕事を行います。

ですから、ダイエットを成功させたいのならば、腸に従ったほうがかしこい選択です。そう断言する根拠として、腸と脳の成り立ちを紐解いてみましょう。

地球上に最初の生命が生まれたのは、今から約40億年も前のことです。生物が最初に持った臓器は腸でした。脳ができたのは、約5億年前と推定されています。

生物は、歴史上8~9割もの期間を、脳を持たずに生きていたのです。約40億年という悠久の時に比べ、約5億年とは地球が1固まばたきをする程度の時間でしょう。

その悠久の時は、地上の生物が、腸を中心に進化を遂げてきた歴史とも言い換えられます。私たち人類も、その一部です。

腸は人類が人間に進化する以前の古い歴史を知っているので「人間の体はこうなっている」と熟知していますが、大脳皮質は人類の進化とともに発達してきた臓器なので、人間の体を熟知できていません。人間もまた、歴史の浅い脳をうまく使いこなせていないのです。だからこそ、私たちは脳に簡単にだまされ、脳をだましてしまえるのでしょう。

そんな脳に対し、腸は私たち人間に誠実です。心身が健康であり続けられるよう、頑固なまでに自分の仕事を行います。「大便は体からの大きな便り」というのはその通りで、腸は便の量や色によって心身の健康状態を私たちに知らせています。

便秘や下痢などは、腸の中で良くないことが起こつているという腸からの警告ですから、とくに腸の声に耳をすませて、腸内細菌が働きやすいようにしてあげることです。

ところが、脳がこれを邪魔するのです。精神的な疲労などが重なると、疲労感を一時でも忘れるために、暴飲暴食に走らせます。「ストレスと免疫の関係」も私の研究テーマの1つですが、ストレスにさらされると、たとえ便通の状態が良くないと知っていても、暴飲暴食という快楽に脳は飛びついてしまうのです。

ダイエットでリバウンドしやすいのは、「食事制限」という我慢がストレスとなり、一瞬でも気を許すと「甘いものを食べた〜い」「お腹いっぱい食べた〜い」と脳が強烈な指令を出すからです。

食べ過ぎ飲み過ぎや肥満が健康に良くないことは誰もが知っていて、それでも痩せられないのは、脳で考えてダイエットをしているからです。

ダイエットを成功させるには、まず腸の声に耳をすませることです。目の前のスイーツを脳が「食べたい」と指令を出してきたら、腸に尋ねてみるのです。「腸は、本当にこのスイーツを食べたいかい? 」と。腸はきっと「NO」と言うでしょう。脳の欲求に惑わされず、食べ過ぎ飲み過ぎを防ぐには、このひと呼吸が非常に重要なのです。

脳が暴飲暴食を要求してきたら、必ず腸に問いかけてください。あなたの問いかけに対し、腸は腸内細菌を増やす食事を欲しがるはずです。

腸内細菌が増えれば腸内がきれいになり、消化力が高まって、排泄力も増します。腸内細菌の好物で食事を整えれば、人は絶対に太りません。

太っている人は痩せていきます。腸は無駄な食べものを決して欲しがりませんから、腸に従えばダイエットは成功します。そして、体も心も健康になります。そうした食べものについては、第2章にてお話ししましょう。

腸が下す判断は脳よりも的確で正しい