歩いていて、ふと ショーウィンドー に映った自分の姿が目に入ることがあります。そのとき、 背すじ が伸びてさっそうと歩いていたら、かっこいい、自分もまだまだ捨てたものではないと、うれしくなりますね。
若々しいフレッシュな自分の姿に脳もも快感を感じる
ところが、逆に、姿勢が悪くて、みるからに老け込んだ姿だったら、落ち込んでしまいます。
このとき、脳の中ではこんな反応が起こっています。かっこいい、うれしいと思うと、その瞬問、脳からは ドーパミン という神経伝達物質がたくさん出ています。 ドーパミン は快感や快楽をもたらす物質で、なんらかの行動によって脳が喜びを感じたときに分泌されるため、 「 脳内報酬物質 」 とも呼ばれています。反対に、落ち込んだり、元気のないときは、 ドーパミン の分泌が少なくなります。
実は、70代、80代でも、姿勢のいい人は 認知症 になる確率が低いことがわかっています。
なぜかといえば、脳と姿勢、さらに 脳 と 筋肉 には密接な関係があるからです。 脳 は、視覚や聴覚や触覚などを通して、外部からの情報を受け取り、それを総合的に判断して、全身をコントロールしています。
そのとき、 脳 からさまざまな指示を受けて動くのが 筋肉 です。でも、 筋肉 は 脳 から一方的に指示されているわけではなく、 筋肉 からも 脳 へ、盛んに情報が送られています。
筋肉 が動くと、 筋肉 の中の筋紡錘という部分が情報を発し、脊髄を通って脳幹、小脳、大脳皮質に届きます。ですから、筋肉が動けば動くほど、脳に大量の情報が伝わり、脳が活性化するのです。
筋紡錘 とは、筋肉の長さを検知する固有受容器の一種であり、筋内線維の束、感覚神経終末、γ運動ニューロンで構成されています。 筋紡錘 の中には筋線維が存在し(錘内筋)、その周りを感覚神経終末が巻き付いています。 筋肉 が伸展されると 筋紡錘 内の 錘内筋 も一緒に引き伸ばされ、感覚神経が活性化し、その情報は求心性に中枢へと送られます。
幸せホルモンにより脳も体も若返る
そこで、私がお勧めしたいのが 「 ひざ裏のばし 」 です。ひざ裏 を伸ばすと、 太もも の裏や ふくらはぎ の筋肉が刺激を受けます。
それによって、脳にもよい影響が及ぶのです。 そこでおすすめしたいのが 太もも を上げながら行う 「 かかと歩き 」 です。太ももを床と水平になるまで上げてかかと歩きをすると、
乳酸が産生されて脳を刺激し、脳下垂体から成長ホルモンが分泌されます。成長ホルモンは、骨や筋肉の成長を促すだけでなく、代謝をコントロールする働きがあり、血管や皮膚をしなやかにしたり、病気への抵抗力を高めたり、記憶力をよくしたりする作用もあります。
まさに、若返りのホルモンです。また、リズミカルに歩くことによって、神経伝達物質であるセロトニンが脳から分泌されます。セロトニンは、心の安定や安らぎをもたらすことから、「幸せホルモン」とも呼ばれています。
興奮物質であるアドレナリンやドーパミンの暴走を抑えて、心のバランスを整える働きがあり、うつ病の予防や改善にも必要な物質です。
このように、ひざ裏を伸ばしたりリズミカルに歩いたりすると、脳が活性化されて、体や心によい物質がたくさん出るのです。それによって、脳も気持ちも若返らせることができます。
この ひざ裏伸ばし も かかと歩き も、 パーキンソン病 のリハビリテーションで行う運動療法の1つです。
パーキンソン病の患者さんはひざが曲がっていることが多く、歩き方もつま先重心で前のめりの小刻み歩行です。
でも、 ひざ裏 を伸ばしたり、太ももを上げてかかとから歩いたりすると、姿勢がよくなり、小刻み歩行を改善できるのです。
パーキンソン病は、ドーパミンの不足によって起こる難病です。でも、 ひざ裏伸ばし で姿勢よく歩けるようになれば、ドーパミンの分泌にも好影響を与えるかもしれませんね。何歳になっても、「 年だから 」とあきらめることはありません。脳は何歳からでも成長し、神経細胞も鍛えれば増えることがわかってきました。簡単で効果の高い ひざ裏伸ばし と かかと歩き 、ぜひお試しください。
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